ベイブレード世界大会・・・・
あれから何年過ぎただろう・・・・・・・・・。


ロシアでの一件で タカオはカイへの気持ちに気づいたものの
どうする事もできず、どうできる筈もなく
ただ月日だけが過ぎていった。

はじめの何年かはBBAで顔を合わす機会が幾度もあった。
カイに会ってバトルして・・・・
少しでも会話して・・・・・それでタカオは満足だった。

だが、カイが中学3年になった頃から
パッタリ・・・・・BBAでは見かけなくなってしまった。
カイの学校は日本でも有数の超名門私立校。
成績が良ければ大学までエスカレーター式に上がっていける。
優秀なカイに受験は無縁の話だが。
その頃から正式に火渡の会社を受け継ぐ勉強が始まったらしい。

最後にタカオがカイに会ってから、また数年が過ぎ
タカオは中学生になっていた。



「はあぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。」
青木川の川原に座り、学校帰りのタカオは盛大にため息をついた。
あれから何年過ぎたんだろう。
俺が中2ってことはカイは高校1年だ。
あの時まだ俺、小学4年だったから・・・・・。

この初恋は4年も続いている。
しかも全くの不毛ときている。この先も・・・・・。
相手が男じゃ、しゃーねーよな〜〜〜〜・・・・・・。

タカオは中学では剣道部に所属している。
祖父に幼い頃から鍛えられたとあって剣道の実力は他を抜きんでていた。
もとよりベイブレード世界チャンピオンBBAチームの木ノ宮として有名なタカオだ。
しかもその清清しい性格からか
誰もがタカオに惹かれた。
友達はたくさん寄ってきたし、女の子にも結構モテるようになった。
告白されたことも一度や二度ではなかった。
だがタカオの心に住む者は、カイただ一人・・・・・・・・・・。
「ごめん、俺、好きな人がいるんだ・・・・・・・・・・。」
今日もタカオはそう言って女の子を泣かせた。

振られる気持ちはタカオには痛いほど解った。
実際に振られたことはなかったが
カイが相手では告白も何も・・・・・。
望みなんてあるはずもなかった。




青木川。
そう、ここだったよな、カイにはじめて会ったのは。
夕日を背にマフラーをたなびかせて・・・・カッコよかったよな〜。
そしてバトル。
信じられね〜くらい強くて。
今にして思えばもう、あの時からカイに惹かれていた。
・・・・好きになっていたと・・・・思う・・・・・。
あんな魅力的なヤツ、他にはいない。
あんな・・・・・。
綺麗でカッコよくて・・・・
炎を纏って戦うカイは苛烈で、絶対の強さの化身のようで。
強くて、厳しくて、優しくて、もろくて・・・・・・・。
そして・・・・・・・・・。



このまま俺は大人になっていくんだろうか・・?


カイを忘れられないまま。


一度も・・・・ぶつかってもみないで?



今まで何度同じ事を自分に問いかけてきただろう?


タカオは知らず苦笑した。


だが結論もいつも同じだった。


そんなこと、できっこない。



震えながら告白してきた女の子達の顔が浮かんだ。
彼女達は、何はともあれぶつかってきた。
・・・・少しだけ彼女たちを羨ましく思った。


男同士でなかったら・・・俺だってとっくに告白していたと思う。 


・・・・・・・・・・・・・・・。




いつまでも・・・こんな不毛な日々を
俺は・・・・続けるんだろうか・・・・?




青木川はあの日と同じようにサワサワと流れていた。 

タカオはその流れを暫く見つめていた。






このままでは一生、前へ進めない。
ずっと・・・ココにいなきゃいけないんだ。





俺らしくね〜よな・・・。












・・・・やっぱ告白するっきゃね〜か。





初恋で大失恋って〜のも・・・・悪くないかもな。


当たって・・・砕け散るのも・・・潔くていいじゃんか。



今まで何年も、散々悩んで苦しんできた。
いいかげん・・・・決着つけないと。


きっとカイは最大限の軽蔑を示すだろう。
それでも。


カイには悪いけど・・・・・・ちょっとだけ・・・・付き合ってくれよな・・・・・。





決心したら少しだけ気が楽になった。
「目的に向かって突き進む!それでこそ木ノ宮タカオだぜ〜!」

拳を握り締め、立ち上がるとカバンを手に
「うっしゃ〜!!」
と気合を入れて走って家に帰っていった。




   ******




今日の課題を終えたカイは自室で紅茶を飲み、寛いでいた。
中学3年になった頃から祖父に送り込まれた家庭教師に
経済学、経営学など、会社を継ぐのに必要な知識を叩き込まれている。
カイの通う高校は公立に比べ勉強の進み具合がかなり早いが、
カイはさらにその上をいっていた。
勉学、会社を継ぐ準備。カイは全てにおいて着実に身に着けていった。

最近は全ての課題を終え、暖かい紅茶を飲むこのひと時だけが
カイにとって安らぎの時となっていた。
窓際のショーケースにはドランザーが保管されていた。
ベイに触れなくなってから、どれだけの時を過ごしただろう・・・・。
最強の称号を常に欲していた自分。
それに付け入られていた自分・・・・・・・。


・・・・アイツは・・・昔と変わらず、元気だろうか・・・?


そんな時、内線電話が鳴った。

「カイ様にお電話です。」
「誰だ。」
「木ノ宮様と仰る方からです。」
「木・・・・木ノ宮だと・・・・?」
たったいまヤツのことを考えていたところだというのに・・・・。




少しすると、とても懐かしい声が受話器から聞こえてきた。
心が震えるような感動を覚えた。

「オッス!久しぶりだな、カイv。」
「・・・・・・。何か用か。」
だがカイは、気持ちを悟られまいとわざとぶっきら棒に言った。


「あ〜〜〜!久しぶりだって〜のに、その態度はね〜だろ〜?」
ぷ〜〜〜〜っと膨れっ面しているタカオの顔がカイの脳裏に浮かぶ。
自然、カイの口元が緩んだ。

「ま、いいか。
あのさ、カイ、忙しいのは分かってるけど、ちょっと時間、取れないかな。
会いたいんだけど。」
「どうした。久しぶりにベイバトルでもしたくなったのか?」
「ん〜〜〜〜〜〜、それもしたいけど、今回は・・・・ちょっと話したいことがあってさ。」
「話だと?ならば今話せばいいだろう。」
「だめ!会いたいんだ!カイ!」
「・・・・・・・・・。」
カイは何時にないタカオのこの押しの強さに飲まれてしまった。


そして

「わかった。では・・・・・3日後夕方なら少しだけ時間を作れる。それでいいか?」
「サンキュー!カイ! じゃあ・・・・どこがいいかな〜、
あ、そうそう、青木川に来てくれよ!
昔、蛭田とバトルしてお前ともバトルした、あそこ。」
「わかった。では3日後。」

ガチャン・・・。
静かに受話器を置いた。





・・・ったく。相変わらずだな、あいつは。
思わす笑みがこぼれた。
いつも突然現れては気持ちのいい初夏の風をもたらしてくれる。


今も・・・昔と変わらず・・・・やはり俺はお前が・・・・・。

ヤツのことだ、今頃は学校生活を謳歌して楽しく暮らしているんだろう。
どんな所でも、どんな事でもヤツにかかれば楽園と化すのだから。

もしかしたら・・・彼女でもできているのかもしれない。

カイは哀しげに笑みを浮かべた。

・・・・それでいい・・・・・・・・・・・。


俺の想いなど、生涯隠し通してみせる。
そして・・・叶うならば火渡の力で陰ながらヤツを守り続ける。
そのために俺は・・・・。


それしにても俺に話とは・・・・一体なんだ・・・・?




一方、タカオ------------------。

うっわ〜〜〜〜〜〜〜!心臓バクバク!!
たった今、カイと話してたんだ!俺!!
カイの・・・ハスキーな声・・・久しぶりに聞いた・・・・。

カイの声を聞けただけで天にも昇りそうになっている自分は・・・
本当にカイが好きなんだと実感する。

よし!3日後だ。
カイ・・・・・ごめんな・・・・・こんな俺につき合わせちゃって。
これが最初で最後だから・・・・・。
カイ・・・・・・。

大好きだ・・・・・・・・・。




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「カイ様にお電話です。」「木ノ宮様と仰る・・。」「木ノ宮だと?」
期待に打ち震えるカイ様vv。そして相手が出る。
「我が名は疾風のジン!カイちゃん元気〜?」
受話器を叩き付けるカイ。
・・・という想像をしてしまいました・・・・。