そしてあっという間に3日が過ぎた。
タカオはその間、どうやって過ごしたのかよく覚えていない。
そのくらい緊張と悲壮な決意を胸に、ただ日を過ごした。

夕方、青木川。
タカオは一度家に帰って制服を脱ぎ、昔よくしていた服装に着替えた。
ジーパンにTシャツ、ジャケット、そして帽子を後ろ向きにかぶって。
今朝は緊張でどうにかなりそうだったが
今はどういうわけか、やけに落ち着いていた。

川の流れを眺め・・・・・昔ここでやったバトルを思い浮かべていた。

暫くすると、そこから少し離れた橋の辺りに黒塗りの高級車が止まった。
カイだ・・・・・・・・・・・・・・・。
タカオは立ち上がって手を振った。

「お〜〜〜〜い!こっちこっち〜〜〜!」


夕日の中を・・・カイが静かに歩いてくる。
モスグリーンのブレザー。高校の制服かな。

もうすぐ・・・・・もうすぐだ・・・・・・・。




「待たせたな。」
「いや、今来たところだから。」
ありがちな言葉を交わす。

数年ぶりにようやく会えたカイは、また少し背が伸びていた。
端正な顔立ち、紅い瞳・・・・・・ハスキーな少し掠れた声。
惹かれる・・・・・惹かれるよ、カイ・・・・。
俺、カイがこんなに好きだったんだ・・・。
タカオは泣きたいような衝動に襲われた。


久しぶりに会った木ノ宮は、昔と同じような格好をしていた。
背も少し伸びたようだがやはり・・・小柄だった。
頬が少し引き締まったか?
顔いっぱいに嬉しそうな笑顔を浮かべるのも変わっていない。
昔のまま・・・・・やはり・・・・愛しい・・・・・。
できることなら・・・・・・・。



「久しぶりだな。元気だったか?」
「お・・・おう・・・。カイも元気そうだな。」

「俺に話とは、何だ?改まって・・・・。」

タカオは柔らかい笑顔を浮かべ
夕日でオレンジ色に染まった川に視線を送りゆっくりと言った。


「なあ、覚えてるか?
初めて俺たちが会ったの、ここだったよな。」

カイにはタカオの真意を掴みかねた。
昔話がしたかったのだろうか。
だがカイもこの場所に久しぶりにやって来たこともあり
タカオに付き合って言った。

「ああ。」
「お前、むちゃくちゃ強かったよな〜。
俺、すっげー悔しかったけど・・・・・・・・。」


暫くタカオは言葉を切った。
カイはタカオの・・・記憶より少し大人びた横顔を眺めながら
次の言葉を待った。

「多分・・・・・あの時から・・・・・俺・・・・・・・。」

タカオはカイを見つめた。
見たこともないような真剣な蒼い瞳で紅い瞳を見つめ、
そして意を決して漸く・・・・言った。

「俺、カイのこと、好きだった。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!?」


その瞬間、カイの頭の中は真っ白になってしまった。

何?

何て・・・言ったんだ?

好き・・・・だと?
誰が・・・?
誰を・・・・?

目を見開いたまま・・・・・・硬直。






そんなカイの様子を見て、タカオは苦笑いをして言った。

「ごめん。びっくりしたよな。男が男に好きなんて尋常じゃね〜よな。
・・・変態・・・かもな、俺・・・。」
自嘲気味に笑うタカオ。

わかっていた。告白する前から。
さあ、トドメを刺してくれ・・・・・・。







一方カイ。

男が男に・・・・?
どういう・・・ことだ?
つまり・・・・・。
いや、そんなことが・・・・・・・・!?
まさか・・・・・・!?






一方タカオ。
どうしよう。カイ、放心状態で何も言わない。
・・・・言えるわけ・・・・ないか・・・・。
あんまり驚いて言葉もないんだよな・・・・・・。
トドメも刺して・・・・もらえない・・・・・か・・・・・・・・・。
しかた・・・・・ない・・・・・よな・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

何時までたっても何も言わないカイに、
タカオは拒絶の返事すらも貰えないことを、哀しく情けなく思った。

これがカイの答えだ。
わかってた・・・わかってたじゃないか!

タカオはこみ上げる涙をグッと堪えた。
でも、これで前に向かって進んでいける。
今日だけは思いっきり泣いて・・・明日からは笑顔で・・・・・。

そして
タカオは精一杯笑顔を作り、言葉を搾り出した。

「カイ・・・・・ありがとう、聞いてくれて。
もう、俺、踏ん切りつけるから。忘れるから。
カイ、すごく忙しいのに、俺の自己満足につき合わせて・・・・・・悪かったな・・・・。」
だんだん涙声になってゆくのを止められない。
泣いちゃだめだ!泣いちゃ・・・・!!

そして涙を見せつつもニッコリ笑って精一杯言った。
「じゃ、俺、もう行くな?
・・・・もう会うこともないと思うけど・・・・・・・・げ・・・・元気で・・・・・・・・。」






タカオが何か言っている・・・。

何て・・・・?

もう、会わない・・・だと?
待て・・・・待て・・・・タカオ・・・・・。
行くな・・・。


行くな!!











突如。
カイは立ち去ろうとするタカオの腕を凄まじい勢いで引き寄せ
タカオを・・・・・・・抱きしめていた。

「な!?」

今度はタカオが驚愕のあまり口が聞けなくなる番だった。
夢にまで見たカイの・・・・だがこれは一体どういう?

カイはタカオをさらに強く強く抱きしめた。

「ま・・・まさかこんな日が・・・・・やって来ようとは・・・・・・。」

語尾が震えていた。

「木ノ宮・・・。」

抱擁を少しだけ緩め、タカオの蒼い瞳を見つめ、今度は力強く告白した。
「俺も・・・お前が好きだ。恐らくここで、初めて会った時から・・・・。」



予想だにしなかった展開に、口をパクパクさせるタカオ。
もうパニックだ。
泡でも吹いて倒れかねない。

カイはそんなタカオにこれ以上ないような優しい、愛しそうな微笑を浮かべ
タカオの唇に自分のそれを・・・・・重ねた・・・・・・・・・・・。


な・・・なんだ・・・・!?
この感触は・・・・・?
カ・・・・カイの・・・・・・く・・・・く・・・・・唇〜〜〜〜〜〜!!????
ひ〜〜〜〜〜〜〜!!!!

真っ赤になって今にも沸騰しそうなタカオが・・・
カイの腕の中で気を失いかけて、くらくらしていた。

「全く・・・・よくもそこまでクルクルと表情が変わるものだ。見ていて飽きんな。」
「だ・・・・誰のせいだよ〜〜〜!」
真っ赤になって、潤んだ瞳で睨み返す。しかもカイの腕の中でである。

・・・・愛しくて・・・・・・・・・。

カイは湧き上がる衝動のまま、もう一度、口付けた。

タカオの体が硬直する。
今度は騒いだりしなかった。

触れるだけの・・・・・長い長い・・・キス・・・・・・。 


タカオの涙の痕を唇で辿りながら、もう一度タカオを抱きしめた。
タカオの想いがいっぱいに詰まった涙の味・・・。
カイは・・・満たされた想いで一杯だった。
今までこれほど満たされたことがあっただろうか?
一生・・・・手に出来るとは思っていなかった。
それを・・・手にすることが・・・出来た・・・・・・・・・・。





タカオは未だ
この急展開について行けなかった。
それもそうだろう、何年も・・・望みも何もあるはずもないと思い続けてきたのだ。




暫くカイの懐におとなしく収まっていたタカオだが、

「ちくしょー、こんなことならもっと早く言えばよかったぜ・・・。
お前も!そういうことなら、もっと早く言えよな〜!」

しかも未だ真っ赤な顔をしてエラソーに言う。
照れ隠しなのは一目瞭然。

全く・・・・・。
そんな顔をされたら、また触れたくなるではないか。

そして、どちらからともなく
笑いがこぼれた。

ふふっ・・・・はははははは・・・・・!

二人は川原に寝ころんで、笑い転げた。
夕日の中を、その笑い声は幸せそうにこだました。

何年・・・俺たちは同じ想いを抱えて悩んでいたんだろう?
蓋を開ければ想いは全く同じだったというのに・・・!

そう思うと可笑しくて・・・

幸せで・・・・・。



















そんな時
先ほどカイを降ろした黒塗りの高級車が、
タカオとカイの傍に静かに停まった。




時間だ。


「すまない、木ノ宮。」

カイは静かに立ち上がった。
タカオも立ち上がる。

「いや。いいって。
・・・・また・・・・会えるかな。」
タカオが切ないような・・・切望するような顔で聞いた。
カイは堪らなくなった。
何もかも投げ捨てて、もう一度抱きしめたい衝動に駆られたが・・・・
静かに笑って言った。

「・・・・当たり前・・だろ?今度、電話する。
・・・・じゃあ、またな。」

タカオの顔がパア〜〜っと明るくなる。
「ああ!またな!カイ!」

パタン。

カイを乗せた車は静かに動き出し、夕日の中に消えていった。

タカオはいつまでも・・・見送っていた。












じゃあ、またな。

またな・・・・。


こんな幸せなことってあるだろうか?
「また」、カイに会える・・・・・・。





「へへっ・・・・!!」
タカオは幸せそうに笑い、目尻の涙を拭うと
いつかのように拳を握り締め、
「うっしゃ〜!!」
と気合を入れ、足取り軽やかに駆けていった。






随分遠回りしちまったけど
これからもよろしくな?



カイ・・・・・・・・・・・・・・・・。


大好きだ・・・。












end

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なんか・・・・かな〜〜〜〜り無理やりな展開ですね。 
もっと上手に表現できないかな。
生まれて初めてですよ、二次小説・・・いえ、作文ですな・・・
そんなモノを書いたのは!
ですが、ず〜〜〜っと脳内にあった妄想を形に出来て本当に嬉しいです!

ここまでお付き合い下さりありがとうございました!
(2005.6.10)