この話を読まれる前に。
「光の中へ 1」には一部18禁的表現が含まれます。
ご注意願います。
興味がおありの方は、その部分は白文字で表示しましたので
「この辺かな〜」という辺りで自己責任の上で反転してみてください。

また、そういった話が苦手な方。
話の流れ上、そうなるのが自然だと思ったから入れたのですが
話の大筋には殆ど関係ありませんので不自然な空白を見つけても心置きなくスルーして下さい。


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青眼の構え。
蒼い炎を纏ったようなその気迫。
一分の隙さえ・・・ない。



タカオ目がカッ・・!と見開いた。

ダンッ!

鋭い踏み込み音と同時に瞬時に間合いをつめ、タカオの右腕がグン!と伸びて・・・。

パアァァ・・・・・・ン!!
「メーーーーーン!!」

タカオの片手面打ちが見事、決まっていた。
まさに一瞬の出来事。

タカオの相手をしていた剣道部主将はその時、本当にタカオの腕が伸びてきたように感じられた。
こんなに小柄なくせに竹刀を構えたら・・・・とても大きく見える。

「全く・・・・敵わんな、木ノ宮には。インターハイ優勝は伊達じゃない。」
「ありがとうございます!」


ここはタカオの大学の剣道部武道場。
総合大学であったので特に剣道の名門という訳ではなかった。

タカオが高校3年であった一昨年のインターハイで、タカオは優勝していた。
1〜2年の時からインターハイ常連で常に上位に進出していたため、高校剣道界では木ノ宮タカオの名前を知らない者はいない。
そのため実際タカオのところへは某有名体育大学からお誘いがあったのだがそれでは自宅から遠く離れたところへ引っ越さねばならない。
体育大学を選んでいれば無試験で入学できたのであるが
タカオは剣道で身を立てようと考えた事はなかった。
なりたいものは他にある。
そのためには普通の総合大学が一番都合がいい。
それに何よりも。
カイと離れたくなかった。
カイの傍にいられてタカオの考えにも合うこの大学に入る為に
タカオは有名体育大学のお誘いを蹴り
死に物狂いで勉強し、そして見事合格して現在に至る。
剣道部は弱小。
幼い頃から祖父に鍛え上げられていたタカオだ。
主将とはいえタカオの相手ではなかった。

面をはずし一息つく。

ふう・・・・・。

「あの・・・・木ノ宮くん・・・・。」
女の子の声がして振り向くと、顔見知りの女子部員。
心なしか頬が赤い?
「なんだ?」
「木ノ宮くんにお客さん。ほら・・・。」
入り口を指差すのでつられて視線を向けると
「・・・!カイ!」
そして改めてその女子部員に目を向けてみたら、やはり恍惚状態でカイを見つめていた。

タカオは思わず苦笑い。
「ありがとな?」
お礼を言ってカイのいる方へと走っていく。
女子部員がざわついているのを聞きながら。

(ったくカイの奴・・・・目立ちすぎだって〜の!
自分がどれだけカッコイイか、ちっとも分かってねーんだから!)

「相変わらず見事だな。」
「へへっ・・・。それよりどうしたんだ?なんか急用か?」
「ああ・・。すまないな、練習中。」
「いいって。でもさー、お前、目出つから・・
せめてもうちょっと普通のラフな格好で来てくれたら嬉しいかな。」
「会社から直接来たのでな。スーツはやはり目立つか・・。」
「・・・ま、カイの場合、何着てても目立つけどな。 (・・・バトルスーツよりはマシだよな。)
で、何があったんだ?」
「木ノ宮。悪いが今すぐ俺と一緒に来てくれるか?」
「いいけど、何処へ?」
「ロンドン。」
「は!?」
「事情は車の中で話す。とにかく来てくれ。」

文字通りそのまま手を引いて行こうとする。
「ま・・・待てって・・・荷物・・・!」
「そんなものは後から取りに戻ればいい。」
「えっ・・・・と・・・・お〜〜〜い!俺、用事できたから!これで失礼しま〜す!!」
タカオは引きずられながら武道場に叫んだ。


スポーツカータイプのシルバーメルセデス。
そんなものが国立大学に駐車してあるだけでどれだけ目立つか・・・。
引きずられて行った先にはやはり野次馬が幾人か。
颯爽と乗り込む上品なスーツ姿のカイに女の子たちは黄色い声を上げ
「悪いな、ちょっと通してくれるか?」
その直後にいまだ剣道着姿のタカオが助手席に乗り込む。
あまりにも不釣合いな二人に「なんなんだ??」という顔の野次馬。
「タ・・・タカオ?」
人ごみの中には知人がいたらしく驚きの声が聞こえてきた。
が、誰かを確認する間もなく、カイは車を静かに滑らせた。






「んで?一体何があったんだ?普通じゃねーよな?」
「・・・・・。少し前からマクレガーと取引を始めた事は・・確か話してあったと思うが・・・。」
「マクレガーって・・・ジョニーだろ?」
「・・・・。そうだ。」
ジョニーと言った途端、カイが不機嫌そうな顔をした。
ジョニーとカイは謂わば犬猿の仲・・と言ってもいいかもしれない。
タカオは昔を思い出し苦笑する。
「あの馬鹿が・・・・とんでもないことを言い出した。すまないな。お前を巻き込む形となった。」
「それはいいって。で、何を言われたんだ?」
「・・・・・。来いと。」
「はあ!?今から?ロンドンへ?」
「そうだ。木ノ宮、お前を連れて来いと。」
「なんで俺なんだ?」
「・・・・知るか・・・。」
カイは相当不機嫌である。
きっとジョニーに随分高飛車な事を言われたのだろう。その様子は容易に想像できた。

車はカイのマンションとは別の方向へ向かっていた。
「カイ・・・いっぺん家に帰るんじゃないのか?」
「ああ。お前のパスポートは用意できている。パスポートさえあれば、後はどうにでもなる。」
は・・・はは・・は・・・。タカオはもう笑うしかない。選択の余地はなさそうだ。

「俺はあんな奴の言いなりになるのは真っ平だったのだが・・・これからの取引に支障が出てはと。
これは社内全体の意思だと言われては、次期社長として行かざるを得ん。
ったく・・・あんな無茶を言い出す奴が奴なら真面目に受け取る父も父だ!
あいつの扱いは俺のほうが慣れてるというのに・・・!」
「まあまあ・・・・。で、今向かってるのは・・・空港だよな?チケットは取れてるのか?」
「ジョニーが自家用ジェットをよこした。」
「は・・・ははは・・・。そうですか・・・。」
全く、タカオは純庶民だというのに・・・カイも・・・ユーロの連中も・・・
いい加減慣れなければと思うのだが・・・・。


空港ではまずVIP専用の待合室へ案内された。
待っていたのはマクレガーの社員だろうか。
「Mr.ヒワタリ、Mr.キノミヤ。お待ちしておりました。」
「・・・・フン・・。」
「いや・・・えーっと・・・・はい。」
「それではこちらへ・・。」
そのまま自家用ジェットに案内されそうになり
「風呂に入らせろ。」
「は?」
「聞こえなかったのか?風呂だ。
突然拉致同然でここまでつれてきたんだ。こんな姿のコイツを見て少しは気を利かせてもらいたい。」
タカオは未だ剣道着姿のまま。
練習中、無理やり連れ出したので汗だくだ。

(カイもジョニーに負けず劣らず高飛車だ〜!俺、風呂なんてどうでもいいよ〜!)
タカオの心の叫びは届くことはなかった。



「カイは?」
「俺はいい。お前は汗だくだろう。入って来い。」
「・・・・・。俺、カイと一緒に入りたい。」
「・・・・。」



結局。
「あ〜〜〜!気持ちいい〜!」
二人並んで湯船に浸かる。タカオはあまりに気持ちよくて大きく伸びをした。
「・・・。」
だがカイの表情は硬い。
「いつまで膨れ面してるんだよ。こんな気持ちのいいお風呂で空港の様子が一望できて眺めもいいし。
こんな広いお風呂に俺たちだけなんだぜ?もう最高じゃねー?」
そうなのだ。さすがVIP専用の温泉だけある。
「・・・・・・。」
「あのさ、もう決まっちゃったんだから、楽しまなきゃ損だぜ?
考えても見ろよ。カイと二人でイギリス旅行!しかも自家用ジェット!
飛行機乗る前は温泉だなんて天国じゃんか。」
こんこんと説くタカオにカイもようやく表情を和らげた。
「それに・・・さ。ジョニーは言い方は偉そうだけど悪い奴じゃない。俺たちに悪いようにはしないと思うぜ?
カイだって・・・分かってんだろ?本当はさ・・・・。」
カイがこんなに不機嫌なのは自分を巻き込んでしまったことも大きいのだろう・・とタカオにも良く分かっていた。
「・・・・。」
「だから・・さ。楽しもうぜ?久しぶりの休日だと思って・・・・。カイ、ここんトコ、忙しかったろ?な?」
「そう・・・だな。この際・・・楽しませてもらおうか。」
ようやく重い口を開いたカイにタカオは大喜びだ。
「そうそう!・・・・って・・・・カイ・・・何やってんだよ!!」
「何って・・・楽しむんだろ?」
カイは後ろからタカオを抱き込んでいた。手の動きが・・・なにやら怪しい。
「カイ・・!ダメだって!こんな所で・・・!」
「誰も来ない・・・。」
耳に舌を差し込みながら囁かれ、体が熱を思い出してしまいそうになるのをタカオは必死に耐えた。
「来なくても・・・・ダメっ!!」
「こんなになっててもか?」
カイはタカオの中心を指でなぞった。
「うっ・・・・あ・・ああ・・・っ!」
眼前には大パノラマの景色が広がっている。
飛び立つ飛行機に着陸する飛行機。ゆっくりとこちらへ近づいてきて・・・すぐ横を通り過ぎていく。
外からこの温泉の中は見えないとは思うが・・・タカオはなんだか気が気ではなくて。
そう思えば思うほど、昂ぶっていく自分がいて。
「カ・・・カイっ!も・・もう・・!」
「・・・・早いな・・。この状態に酔っているのか?」
「ちが・・っ・・あ・・あああ・・・・ああ・・っ!!」
タカオの周りの湯が白濁した。
「・・・・・もう・・・信じらんねー・・・・・。」
はあ・・・はあ・・・・と荒く息をしながら苦情を訴えるタカオ。
後ろ髪が濡れて分かれて普段は隠されている項が顕わになり更にカイを刺激する。
カイの腕の中でカイの手で欲望を吐き出し、そしてグッタリと凭れかかるタカオに
愛しさを覚え昂ぶりを感じない訳ではなかったが、さすがにこの先をスルのは戸惑われた。
「タカオ・・・続きはロンドンで・・・・。」
「・・・ん・・・・。」
カイはタカオを後ろから抱きしめたまま口付けた。






「あ〜〜、サッパリした!」
汗を流し、また別の意味でもサッパリしたタカオはすっかり上機嫌だ。
温泉に入る前、カイは火渡の者に連絡し、タカオにもカイにも着替えを用意するよう指示したため、
二人ともカジュアルな姿で現れた。
タカオが着てきた胴着はそのまま火渡の者が持ち帰って洗濯する手はずになっている。
その他、この旅行に必要な着替えなどは二人が入浴している間に全て揃えられた。


「それではこちらへ。」
そしていよいよ自家用高級ジェット機でロンドンへ出発だ!
ロンドンまで約12時間。その間退屈かとも思ったのだが全く退屈はしなかった。
飛び立って暫くしたら料理が出てきたのであるが、その料理のおいしいことといったら!
オードブルからメインディッシュ、最後のデザート、コーヒーに至るまでとても機内食とは思えない。
客室乗務員の話によればオリビエが直々に吟味したという・・・・。なるほど、美味しいわけだ。
そのほか設備も心配りが完璧だった。
洗面所なども広々として高級感清潔感に溢れていた。
シートは普通のジェット機のファーストクラス用のものより更にゆったり快適にできたもので
眠くなればそれは心地よいベッドへと変形する。
夜はカイと少しだけブランデーを飲んで眠りについた。ふんわりとした羽根布団をかけて。
さすがにこのベッドでいつものような営みはできないが・・・・。それでもタカオにとっては何から何かで新鮮で楽しかった。
充分に睡眠をとった後は、美味しい朝食を頂いて。
一息入れた頃・・・・無事ロンドンへ到着した。




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2006.5.31