カイは当初、HIWATARI館内のレストランで食事を・・・と思っていたが、
今のタカオの様子から、外の売店で適当に昼食を取ることにした。
タカオは・・・・青空の下で笑っているのが一番良く似合っている。
あんな・・・・張り付いた笑顔の下に何が隠されているか分からないような
それを読みながら常に取引しているような世界など、タカオに合う筈もない。
合って欲しくも無い。
・・・・早くいつものタカオに戻って欲しかった。




「カイ〜、お前、俺と一緒でいいか?」
「ああ、任せる。」


暫くするとタカオは、ピザとフライドポテトとコーラをトレイに乗せて持ってきた。
日陰のベンチを探し、腰掛ける。

「ん〜〜〜〜〜〜!!疲れたな〜〜〜〜!!」

タカオは軽く伸びをした。
そしてガツガツと食べ始めた。

「お!このピザ、結構うまいじゃん!」

どうやら元気を取り戻したタカオに
カイは内心ホッと胸をなでおろした。
そしてカイもピザを手に取った。

「どこのパビリオンに行きたい?」
「そーだな〜。とりあえずマンモス見たいな。
大人気のHIWATARI館は見れてラッキーだったぜ。凄い行列だったな。あれ、どれくらい待つんだ?」
「さあ、3〜4時間は待つらしいが・・・・。」
「さ・・・・3〜4時間!?・・・超ラッキ〜だったけど、なんか悪いな・・・。」
「気にしなくてもいい。
・・・・マンモスか。ちょっと待ってろ。」

カイは携帯電話を手に取った。



暫くすると、さっきの事務のお姉さんがやってきて、カイに何か紙切れを渡していた。

「木ノ宮、13時からマンモスだ。
14時からはト○タ館、夜8時からは展覧車の予約が取れた。」
「・・・・・え!予約・・・・まさか今取ったのか?」
「ああ。他にも行きたい所があったら言えよ?」

事前予約はほぼ不可能な状態だと・・・テレビで言ってたような・・・。
どうしても見たければ何時間も待つ覚悟で並ぶしかないと・・・・。
それを・・・・この一瞬で・・・・予約が取れたって〜〜〜〜!!??

さすが火渡の力・・・・恐るべし、火渡・・・・。
は・・・はははは・・・・・・。


「行くぞ。そろそろ時間だ。」





「どひゃ〜〜〜〜〜〜!!マンモス!マンモス!毛、生えてる〜〜〜!!
これがマンモスの頭か〜〜〜!!リアルだぜ・・・。」
「カイ!マンモスの牙だ〜〜〜〜!うわ〜〜〜、すべすべだぜ〜〜〜!!」


「あ・・・あれ、ロボットなんだよな?あんなことできるのか??」
「トランペット吹いてる・・・・踊ってる・・・・・
げ!今度はベイブレードだぜ・・・・アレには勝てるな!」
「・・・・当然だろう・・・。」



「ん〜〜〜〜〜、満足vv。次、どうしよっか?」

予定通り、マンモスもト○タも見てしまったので、
今度は各国のパビリオンへ行くことにしてみた。




「うわ!この人形、凄いな〜!」
「・・・彫刻だ。ギリシャ神話に登場する森の精サテュロスだそうだ。」
「へ〜〜〜。だからこんなに楽しそうに跳んでるんだな〜。何でこんなに穴だらけなんだ?手も足もないし。」
「何年か前、イタリア、シチリア島沖で見つかったらしい。紀元前の彫刻だからな。」
「へ〜〜〜〜〜。ああ、イタリアって言えば、ジャンカルロは元気かな〜?」
「・・・・・。」
タカオにとっては今後、門外不出間違いなしの
イタリアの、いや人類の宝など、それほど興味は無いらしい。
タカオらしいと言えばタカオらしい。


「カイ!森、森だ!なんかいいな〜、こういうの!」
なるほど、イギリスはガーデニングの本家本元。
「あ、ココで写真撮ろうぜ?」
見ると、トーテムポール型の高い塔のようなオブジェ。
記念撮影をどうぞ、と言わんばかりにベンチが設置されていた。
だが、
「俺はいい。」
カイは写真は嫌いだった。
「そんなこと言わずによ〜!あ、すいませ〜〜ん!写真お願いしま〜す!」
タカオはデジカメを近くにいた人の良さそうなおばさんに渡し、
逃げようとするカイを無理やり引っ張り込んで

カシャ!




イギリス館を出ると、目の前にあったのはロシア館。
「・・・・・・・・カ・・・カイ、あっち行ってみようぜ?」
タカオはロシア館とは反対方向を指差し、歩き出した。
タカオなりに気を使ったのだろう。
だがカイは繋いだ手に力を込めタカオを引き止めた。
「変な気を回さなくてもいい。行こう。」
「カイ・・・・。」
「あそこにはマンモスの全身の骨格があるらしいぞ?」
「・・・・!」

「うわ〜〜〜〜〜〜!!すげ〜〜〜〜!!!
マンモスっていったら凄くでかいのかと思ってたぜ。
これじゃ、動物園で見た象とあんまり変わらないな!」
うわ〜〜〜〜!!ひゃ〜〜〜〜〜!!すげ〜〜〜〜〜!!!

タカオは先ほどの憂える様子とは打って変わってロシア館を満喫していた。

・・・・それでいい。
過去のことなど・・・・・もう忘れた。
それに・・・・あれがあったからこそ・・・・お前に会えた・・・・・。









「うわ〜〜〜〜カイ、これってツタンカーメンの黄金のマスクってヤツか?」
「ああ、レプリカだがな。」
「なあ、王家の呪いってあると思うか?」
「・・・・・・・・さあな。」


エジプト館を出た先には屋外舞台があり、
黒人達がアフリカの楽器を弾き踊っていた。
大勢の観客も楽しそうに手を打ってリズムを取っている。


「わ〜〜〜vv、見ろよ、みんな踊ってる!俺たちもいこうぜ!」
「ま・・・・待て!木ノ宮!・・・俺はいい!お前だけ踊って来い!!放せ!!」
そうこう言う内に、タカオはカイの手を引っ張って舞台に上がってしまった。
「え〜っとこうやって・・・こうか!カイも踊ろうぜv。」
と笑顔を向けた。

「俺はいい!」
と言って戻ろうとしたのだが、怪しげなアフリカ人に掴まってしまい、
手取り足取り踊り方を教えてくれるものだから。

な・・・なんで俺が、こんな怪しげな黒人と踊らなくてはならないんだ・・・!

「うわ〜!カイ!上手いじゃねーか!よ〜し、俺も!!」
タカオが張り切って踊り始める。

「・・・・一生やってろ・・・。」
カイは怪しげなアフリカ人の隙をついて、舞台を降りた。

漸く舞台を降りることができ、ホッと安堵の溜息をつき、そして改めて舞台上のタカオを見上げた。

「ふん、嬉しそうに踊ってやがる・・・・。」
タカオは本当に楽しそうだった。
いつの間にか舞台上の全ての外国人と笑顔を交わし、生き生きとして皆で踊っていた。

そんなタカオに、愛しさと・・・・憧れのような眼差しを送るカイ。

アイツの清清しい心は誰をも惹きつける。
会ったばかりの外国人でさえ・・・・あのザマだ。
心からの笑顔で、魂で会話する。
タカオの最大の魅力の一つ・・・。

俺には到底できることではない。
作り笑いの権力者とうまく渡り合うより・・・・・
タカオ、お前の方が、ずっと・・・・・・。




漸く全ての曲が終わったようだ。
いつの間にかタカオは怪しげな黒人達の真ん中で
両手を挙げて拍手喝采をもらっている。


そんなタカオが、何よりも・・・・眩しかった。



「あ〜、楽しかった!ほら、見ろよv。」

タカオの手の中には先ほどの外国人の故郷の品だろうか、
人形や笛、首飾り、お菓子などがのっていた。

「やるってさ。」

そう言ってタカオは振り返り、先ほどの外国人に笑顔で手を振った。
もうすっかり仲良しさんになったようだ。

「カイも一緒に踊ればよかったのに〜〜!!」
「俺はいいと言ったろう・・・。」



タカオはこうやって、各国館の外国人とすぐに仲良くなった。
貧しそうな国の人ほど、何故か気前良くタカオに食べ物や郷土の物など色々くれた。

夜になる頃にはタカオの首や腕、指にはアクセサリーがジャラジャラ・・・・。
紙袋(ターバンを巻いた怪しげなアジア人のおじさんがくれた)の中には
外国の人形や工芸品、お菓子などがいっぱい入っていた。

カイは少々呆れたが、皆がタカオの魅力に惹かれた証だと・・・思い直していた。



そして、そろそろ展覧車の時間。

展覧車とは、観覧車がまわる、その半分ほどに囲いがついていて、その囲いの中で
なにか映像を見せてくれる・・・・そういったものらしい。




回ってきた観覧車に二人で乗り込んだ。

車の歴史・・・。
そんな映像を見ながら・・・観覧車はゆっくりと回っていく。

そして、もう少しで頂上に辿り着こうという時に・・・・囲いの外へでる。

外は夜。
いきなり観覧車の頂上から、夜景を見渡せる。

「・・・・!!!
き・・・・・綺麗だ・・・・・・。カイ・・・まるで宝石箱だ・・・!!」

山の中に作られた万博会場。
数々のパビリオンからの光が、眩いばかりに輝いていた。

そして・・・・。

ヒュ〜〜〜・・・・ドドーン!!

「あ・・・・!花火!!」

少し離れたところだが花火が打ち上げられていた。

「どこかで祭りでもやってるらしいな。」

二人きりの観覧車の頂上で
美しい夜景と花火が・・・・
カイとタカオを歓迎してくれた。

「カイ・・・・ありがとな。
俺・・・・すっげ〜幸せだ・・・・・。」

そう言ってタカオはこの上もない笑顔をカイに向けた。

「・・・!」
カイは・・・思わず・・・・無意識のうちに・・・
タカオに口付けていた・・・。

カイの唇の柔らかな感触、体温を感じ
必死になってしがみつく。



カイの腕の中で見た夜景は・・・・・本当に・・・・綺麗だった・・・・・!







観覧車がゆっくりと・・・・高度を下げる。

ゆっくりと・・・宝石箱の中へ降りていく・・・・。
夢の時間は・・・もう、ここまで。



楽しかったぜ、カイ・・・・。

ホント、ありがとな・・・・・・。




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第二弾は普通にデ〜トです。
タカオだったら万博開場で踊っている怪しげな(ゴメンナサイ)外国人とも
すぐに仲良くなっちゃうだろうな〜vv。と思いました。
心と心で対話できるタカオを眩しい思いで見守るカイを書きたかったのです。
展覧車で花火というのは私自身の体験です。
運が良かったのでしょうね。綺麗でした!
また、「万博デ〜ト1」で、王子云々の話ですが・・・・。
開幕間もない頃、実は一度万博に行っていたのですが、
その時どこかの外国館で、体格の良い黒スーツ10人ほどと、
その中央でニコヤカな笑みを浮かべる偉そうな西洋人を見たんです。
多分、ヨーロッパの何処かの国の要人とそのボディーガードでしょう。
そんな記憶から、カイ様と王子の場面が出来上がりました。


そして、「万博デ〜ト 3」に進む前に・・・
実は「2」と「3」の間にオマケの話があります。
興味ある方は裏に行ってみて下さいね。
勿論このオマケの話は読まなくても全体の流れに支障はありませんので、
裏的話が苦手な方はこのまま「3」にお進み下さい。