「カイ、これやるよ。」

目の前に差し出されたのは、一枚の板チョコ。

「・・・・。」
「あ、その顔は今日が何の日か、分ってねーな?」
「・・・・。バレンタインデーだろう。」
「そうそう!さすがのカイも知ってたか。」

そう言われて、カイは呆れた。

「お前、俺を何だと思っている。」

苦情を言うカイには全く構わず。

「だからさ、チョコレート。はい。」

ニッコリと笑うタカオ。
かなり、かわいい・・・・。


しかし、カイは少々困ってしまった。
いくらバレンタインデーの贈り物とはいえ
チョコレートなどという甘いものが苦手であったので。
とはいえ、タカオがせっかくカイの為に用意してくれたものを
食べない訳にもいかない。
仕方がない、と決意した所で。

「でもやっぱ、カイは甘いもの、苦手だし・・・
こんなもの、貰っても迷惑だよな・・・ゴメン。」

タカオはカイの思惑を読み取ったように言った。

「いや、そんな事はない!大丈夫だ。」

と、カイは必死に言ってみるが。

「いいよ、無理しなくたって。だからこれ、俺も食べていいか?」
「・・・・。それは構わんが・・・・?」

カイは、タカオが一体何をしたいのか分からなくなった。
バレンタインデーだから、チョコをあげるという。
これは分る。
甘いものがダメだと分かっていても、今日はそういう日だ。
しかし、あげると言っておいて
カイは甘いものが苦手だからやっぱり無理だろう、と言い
結局は、そのチョコを自分も食べるという。

ん・・・・・?
「俺も」食べていいか??
「俺が」ではなく??

タカオはカイの目の前で、チョコレートの銀紙をペリペリめくると。

「一緒に食べようぜ?」

そう言いながら
パキッ・・とチョコレートを口でへし折って
チョコの欠片を咥えて、カイへと差し出した。

こ、これは・・・・!!

目の前には、まるでキスをねだるかのようなタカオの姿。
その柔らかな唇には、ひとかけらのチョコレート。

それを、食えと・・・・。

血が一気に逆流して脳天まで駆け昇った。
鼻血が出るかと思ったほどだ。

それを何とか抑え込み。
カイはタカオの命ずるままに
チョコレートごと、唇を・・・・・。

絡まる舌と、チョコレートが・・・・甘い。
チョコと、互いの唾液が混ざり合っていく。
互いの舌で転がしあって・・・・たまらない・・・・・。
甘くて・・・ちょっとほろ苦くて・・・・ずっと、味わっていたいような・・・・・。


文字通り、味わい続け
もう、すっかりチョコの味などしなくなった頃
ようやくカイはタカオの唇を解放した。

「・・ん・・・。」

吐息までも甘い。
朦朧とした意識の中、唇だけを離して、熱い瞳で見つめ合って。

「お前・・・謀ったな?」
「だって・・・普通にあげたって・・・カイは・・・食べてくれないかもしれないし・・・・。」
「これなら食べるだろうと?」
「・・・うん・・・。」

・・・・。
完全に行動を見透かされている。

ちょっと苦笑を浮かべたくなったカイであるが
どうやったらカイがチョコを食べてくれるか
タカオは、あーでもない、こーでもないと一生懸命考えたのだろう。
そんな姿を想うと、自然、愛おしさが込み上げてくる。

そうして辿り着いた結論というのが
キスを強請るように口に咥えてチョコを差し出せば・・・という訳か。

もしかして木ノ宮は、俺をそういう・・・
いわゆる「がっついた奴」だと思っているのだろうか??

そしてカイは今までの記憶をたどる。

あんな事もあった・・・こんな事も・・・・・。
つい先日も、そう言えば・・・・・・・。

まずい。
誰がどう見ても、相当・・・かなり・・・がっついている・・・・・!!
木ノ宮を見ていると、つい俺は・・・思わず手が出て、そして・・・・・。
もしも室内であれば、それだけに止まらず・・・・・・。
・・・・・・。
いかん!!こんな事では!!
これでは、ただのスケベ野郎ではないか!!
行動を改めなければ!!

固い決意をして、改めてタカオに目を向ける。
だが、しかし。

目の前で、恥ずかしそうに頬を染めて
カイの問いにコクン・・と頷くタカオを見ていると、どうしても・・・・。
愛おしくて・・・心の底から、愛おしくて・・・・・。
もっと・・・・タカオを感じたくて・・・・触れたくて・・・・・・・。

やはり、無理だ・・・・。

火渡カイ、あっけなく陥落。

カイはもう一度、込み上げる衝動のまま、タカオに唇を押し付け
甘く柔らかな舌を絡め取った。




Happy Valentine's Day!!


















end



前のバレンタインの時に日記に書いた話です。
小ネタには長かったのでSSとして上げました。

何も考えず、書き始めたように覚えています。
バレンタインだし〜、と思いつくまま・・・・。
読み返してみたら、タカカイのバレンタインネタと似てる・・・!!
すみません、ご容赦ください!!

ここまで読んで下さり、ありがとうございました!
(2016.2.11)



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