「タカオ・・。」

夜、いつもの逢引の時間。

他のメンバーは見て見ぬ振り。気付かぬ振り。
間違いだけは起きないように、とキョウジュは目を光らせていたものの・・・。
そんな心配は全く不要だった。

タカオ相手では百戦錬磨の両刀使いのレイも
ただの臆病者の化してしまうのだから不思議だ。
タカオを傷つけたくない、という想いと
拒絶されたら・・という想い。
それだけでなく。
レイにはどうしてもそんな気になれなかったのだ。
あの金李たるものがキス以上、手も出せずにいるなんて。
彼の今までを知るものが見たら、腰を抜かす程に驚くだろう。

しっとりと柔らかな弾力のあるタカオの唇。
舌も差し込めない、臆病者の自分。
今日も触れるだけのキスをして、その体をしっかりと抱きしめるだけ。

今まで・・・・。
付き合ってきた相手の事をレイなりに好きだと想って接してきた。
好きだからキスをして、そして・・・・。

なのに。
こんな想いは初めてだ。
好きで好きでたまらない。
なのにキス以上、進めない・・・・。

「おやすみ。」
そう言ってタカオが部屋に消えてからも
レイはいつまでも空を見ていた。
自分の瞳のような、美しい満月を。

好きだから触れない。
こういう愛し方もあったのだと・・・・。
今まで何人の女と、男と付き合ってきたか忘れてしまったが
こんな気持ちは初めてだった。
こんな気持ちは知らない。
でも・・・悪くはない。
俺は今、幸せだ・・・・とても・・・・・・。

それにしても・・・月の光がなんて心地いいんだろう。
もう少し、タカオと一緒に月を眺めていればよかったな。
タカオと共に、満月を見上げて満ち足りた微笑を交わし・・・。

そんな事を思いながら、レイも部屋に消えた。
明日のバトルに備えて。

「タカオ、おやすみ・・・・。」
















end


小ネタを整理しようと思って、昔の日記から色々抜粋してたんですが
これは短いながらも話になってるかな〜と上げる事に。
「大切なもの」と似た所がありますが・・そこはご勘弁願えると助かります。
えっと・・確かレイタカな夢を見たんです。
以下、日記よりそのまま抜粋。
「夢を見ました。
レイタカな夢。
レイの瞳が美しかった・・・!
タカオは身動きが出来ないんです。
至近距離で手を絡めて握り締められて。
あの満月のような綺麗な瞳に見つめられて。
そして段々細くなっていくレイの瞳の瞳孔。
絵柄は無印でした。」
そんな訳でこの話を一気に書いてしまった記憶があります。

ここまで読んで下さりありがとうございました。
(2010.6.15)

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