アメリカ。
自由の国、アメリカ。



アメリカに来た、その日のうちに
俺達は地獄を味わった─────────。







「レイ!待ってくれよ!レイ!!」

「・・・・・すまない。今日だけは・・・そっとしておいてくれないか・・・・。」
振り向きもせず答えた。

「レイ・・・。悔しいのは・・・俺も・・・みんなも一緒だって。」
「・・・・。・・・・っ!!」
レイは唇を噛み、拳を握り締めた。

悔しかった。
世界を旅して世界中のブレイダーとバトルをしてきた。
何処へ行っても引けは取らない。
そう・・・・思っていた。

中国大会でライを破り
俺は・・・世界中の誰にだって・・・負けないと・・・・!!

だが、甘かった──────!!


「レイ・・。」
気がつけば、タカオはレイのすぐ後ろに。
レイの背中にその額をつけて、手はレイの腰に回して。

「俺も悔しい。でも・・・ちょっとだけ嬉しい。」
「タカ・・・オ?」
後ろから抱きつく格好だったタカオはレイの正面に向き直り、
「やっぱ・・さあ。簡単に誰にでも勝っちゃったらつまんなくねー?
次々に強い奴が出てきてくれなきゃさー、燃えられねーじゃん。
ワクワクできねーじゃん!
強い奴が現れたら、そいつより強くなればいいんだろ??」

レイは呆気に取られたような顔をした。
「頑張ろうぜ?何とかなるって!!」
「そうは・・いっても・・・・な。」

「レイは俺の言う事、信じられねーのか?」
苦笑するレイに、タカオが膨れ面をして抗議する。
これにはレイも困ってしまった。
もうすっかりタカオのペースに乗せられてしまったレイ。

「・・・・。そうだな・・。タカオの言う通りだ。」

レイの答えを聞いてへへっ・・・とタカオは笑う。
「まずは今日はぐっすり眠る事!そして明日から特訓だ〜!!」

何処までも前向きなタカオ。
タカオと共にいれば、どこまでも強くなれる・・・そんな気がした。
過去に囚われる事もなく、未来だけを見据えて。

拳を空に上げて誓うタカオ。
可愛い・・・・俺の・・・・・・・・。


「レ・・レイ?」
「今日はまだ・・・してなかっただろ・・?」

摩天楼に輝くどんな星よりも美しい金色の瞳で見つめられたら
拒める者などいるのだろうか──────?


タカオは導かれるように、星空を映したその蒼い瞳を閉じた。


どこまでも甘い
触れるだけの・・・・・キス。


それだけで心の底から
暖かく、幸せな気持ちになれる。
こんな気持ちは───今まで感じた事などなかった。

生まれた事に感謝する、そんな瞬間。


名残惜しげに唇だけを離した至近距離で見つめあい、そして笑いあう。

こんなに幸せなのだ。
何とかならない筈はない。
勿論不安は大きかったが・・・・これからも、きっと大丈夫さ!

根拠のない自信のようなもので互いに言い聞かせた。


「じゃ・・・おやすみ。タカオ。」
「ああ!おやすみ、レイ!」

そしてそれぞれの部屋へと消えた。



中国大会終了後、互いの気持ちが通じ合ったことは既にメンバー全員に知れ渡っていた。(『恋歌』参照)
他のメンバーは渋々黙認したものの、やはり「間違い」があっては大変!と
部屋だけは別々にしようとキョウジュが言い出したのであった。

だがそんな提案こそ「下種の勘ぐり」とでも言うのだろうか。
レイは今まで付き合った相手にこそヤりたい放題であったのだが
タカオ相手ではとてもそんな気になれなかった。
勿論・・・したくない気持ちはない訳ではなかったが
そんなことより何よりも。
大切にしたかった。
掛け替えのない、タカオを──────。
百戦錬磨の両刀使い、金李もようやく真実の恋というものを知ったらしい。
そしてタカオは正真正銘、初々しいばかりの初恋で。

そんな姿を目の当たりにしては
キョウジュはハラハラ取り越し苦労をし
マックスは「全く二人とも very cute ネ〜!!」と苦笑を漏らし、
カイはお決まりのセリフ、「フン・・。下らん。」と。
でも互いが幸せならば、それで良いではないか。



翌日から、大転寺会長の提案でBBAチームは大自然の中で合宿をすることとなった。
はじめは「こんな場所で何が・・」と感じた彼等。

だが・・・・・。
そこで出合った、ドミニカの気持ちのいい少年。
そこで得られた大切な事。

たとえ誰であろうとも
どんなに短い時間でも
どんな場所でも
練習すれば強くなれる。

自分たちだって、まだまだ強くなれる。努力すれば成長できる。


それからは生まれ変わったように練習に励みベイと共に戦った。
新しいベイを得たレイとタカオ
そして他のBBAメンバーもそれからは無敵だった。
タカオがキャシー・グローリアやブラジルチームの女釣り師ブレーダーにヤキモチを焼いたり
腹を壊したり等のトラブルはあったものの─────。

「信じられなねー!俺が腹壊して苦しんでる時に何やってんだよっ!」
「すまん・・・・つい、癖で・・・・。」
「癖〜〜?一体どんな癖だよ!
可愛い女の子や綺麗なお姉さんを見たら手当たり次第ってか!?」
「すまなかった!この通りだ!!」
「・・・・・どーせ、俺は可愛くも綺麗でもないし、何より・・・・・男、だしな・・・・・。」
「なにを・・・!俺はタカオがタカオだから好きなんだ!男とか女とかそれ以前に!
それに・・・・・タカオのほうが、ずっと可愛い。」
「なに、言って・・・。」
「本当だ。」
「レイ・・。」
「タカオ・・。」

彼等はいつも幸せだった。
そして大好きなベイと共に、彼等の躍進は止まらない。


PPBとの決戦はもうすぐ。








end

アメリカ編のあの合宿の話は大好きな話の一つです。
この辺りで何か話を書きたいな〜と思ってできた話です。
この合宿の話でのカイの活躍(?)が大好きですが、今回はレイにスポットを当ててみました。
PPBとの戦い、レイは負けちゃうんだけどね・・。
短く取り留めのない話ですが・・・・ここまで読んで下さりありがとうございました。
(2007.11.21)

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