はら・・はらと・・・・桜、舞う。
今年も俺は一人で、桜を見上げ
そして散りゆく姿を、ただ眺める。

年度が終わり、新しい年が始まる
桜は出会いと別れの象徴。
今年もお前と一緒に桜を見ることは叶わなかった。
来年は・・・叶うだろうか。
俺のこの、ささやかな願い。


会いたい。
そう、素直に言えたら・・どんなにいいだろう。
でもわかってる。
会いたいと言って、すぐに会える状態じゃないし。
そんな事、言っても無駄だって事を。

「お前に頑張れ!なんて言うまでもなく頑張ってるだろうから
頼む、無理だけはしないでくれ・・・・。カイに何かあったら、俺・・・・・。」
「馬鹿、なんの心配をしている。俺は無理などしていない。」


馬鹿はお前だよ、カイ・・・・。
お前はいつだって、自分の身を極限状態に置いて自分を磨き上げるんだ。
いつもギリギリの状態で・・まさに死と紙一重の状態で・・・・。
心配するな、って言うほうが無理な話だろう・・・この大馬鹿野郎。

せめて見守っていたいのに
見守る事すら出来ないところへ行ってしまった。


カイが留学して何年になるだろう。
年に一度の帰国。
会うたびにカイが大きくなっていくのがわかる。
会うたびに・・・俺とお前が離れていくのがわかる。
会えて嬉しい筈なのに、無性に悲しくなるんだ。
お前はすごく優しくしてくれるけど
久し振りに会えた時は、とても優しく・・俺を包んでくれるけど
無性に、どうしようもないくらいに・・・・悲しくなるんだ。


日毎に逞しくなっていく
それは体のことだけでなく、身も心も、ただでさえ優秀な頭脳も。
俺はかける言葉も見つからない。
ただ、無茶はするなと願うばかり。
そして想いだけが・・・募っていく・・・・・・。




はら・・はら・・・・桜の花びらが・・・・空を舞う。

カイ・・・。
会いたい・・・会いたいよ・・・・・。
そして傍にいたい、ずっと・・・・・・・!!

離れていかないで・・・俺から離れていかないで!!







気付けば俺は涙を流していた。
・・はは、馬鹿みてー。

俺は慌てて袖でゴシゴシと涙を拭った。

カイにはカイの道がある。
俺には俺の。
俺にはどう頑張ったって、世界有数の大会社の社長なんて有り得ないけど
それでも俺には俺の、生き方、夢がある。

分相応に頑張るしかない。
今度会った時、少しでも胸を張れるように。
それが唯一、カイに近づける道だと・・・思ってる。

でも、俺の一番の夢は・・・・カイ、お前なんだ。
好きな人と一緒にいたい。
それは人間なら・・・誰もがそう思うものだろ?
でも、その夢を持ち続けても良いのか、不安になる。
ただでさえ、男同士なのに。
そして住む世界も違いすぎる。
年に一度の帰国、後は電話やメールだけでは・・・不安になる。


桜、桜・・・散らないでくれ・・・・。
一気に満開に咲き誇り、そしてあっという間に散っていく。
あまりに無情で儚くて。
俺の想いが・・・儚く散っていくようで・・・・・。



俺のこの感情を捨てたら、楽になる・・・そう、言っているようで・・・・・。






はら・・はらと・・・・桜、舞う。

俺の願いとは裏腹に、桜の花びらは大空を舞う。















end


先週の話ですが花見に行きました。
それでタカオが一人、切なげに桜を見上げている姿が頭に浮かびました。
それはきっと、会いたくても会えない状態なんだろうな。
そうなるとカイは日本ではなく外国にいるかもな・・と思いながら発展していったものです。
このあと、カイが現れる・・涙の再会!なんてのも考えたんですが
あまりにわざとらしい展開なのでやめました(笑)。
それから、この話の二人の年齢ですが、高校生か大学生くらいかな〜。
特にしっかり考えていませんが、お好みの年代で妄想して下さったら嬉しいですv。

それでは、ここまで読んで下さり、ありがとうございました!
(2010.4.16)


novel top