決勝戦3戦の後のサドンデス戦。

レイは見事・・・・・ライを下し、BBAチームはアジアを制した。







全てが終わり、
レイはBBA宿舎近くの大きな木に登り、広がる景色を眺めながら
なんとなく、村を出てからのことに思いを馳せていた。




魂のぶつけ合いのようなライとのラストバトル。
お互いの気持ちを、力を見せ付け・・・それはライの憎しみで凝り固まった心を溶かし


ようやく・・・故郷の者達との和解を果たした。




レイの心は、喜びと達成感で溢れていた。






そして改めて、これからのアメリカ大会を、まだ見ぬ強敵を思う。
白虎族の未来の為に。
そして自分自身の未来の為に・・・・・。






「レーイ!おーい、レーイ!!そんなところにいたのか〜!!」
突然のタカオの声で現実に引き戻された。

見ると木の根元で、タカオがこちらを見上げ、手を振っていた。

「タカオ・・・・。」

そう。
タカオに出会えた事も、村を出たからこそ・・・・。

レイの表情が自然、ほころんだ。

「レーイ、そっち行ってもいいか〜!?」
「・・・・勿論構わないが・・・・昇ってこれるか?」
「へへっ・・!まあ、見てろって!」



タカオは太い幹をよじ登ったかと思うと枝から枝へと飛び移り、見事レイのいる所までよじ登ってきた。

「・・・・驚いた・・。上手いもんだな。」
「へへっ。ウチの裏山で、よく兄ちゃんと木登りしたんだ。」
「兄ちゃんって・・・・ジンか?」
「そうvv。レイは仁兄ちゃんと日本に来たんだったな。」
「ああ・・・・。」

「・・・・ちょっと妬けるな。俺、家での兄ちゃんしか知らないから。
仁兄ちゃんが世界中渡り歩いてどんな風に生きているのか、全く知らない・・・・。」

「・・・・・・。ジンは・・・・大したヤツだよ。
白虎族の村に辿り着いただけでも褒めてやりたいくらいなのに。
タカオも知っての通り、白虎族では力のある者が尊敬されるが、ジンはそちらの方面も抜きん出ていたんだ。
白虎族の精鋭に混じっても問題ないくらいだった。日本で元々武術でも?」

「・・・・さ・・・さあ・・・・。じっちゃんに剣道を仕込まれたけど、他は・・・良く分かんねー。
忍者の修行が趣味だったけどな。・・・・仁兄ちゃん、そんなに強いのか。」
タカオは哀しそうに俯いた。自分は兄のことを、こんなにも知らない。

それを察知したのかレイはこうも言った。
「村にいた時、ジンは俺に話してくれたよ。日本には大事な弟がいるって。
世界には強いヤツが山ほどいると教えてくれたのもジンだった。
それがヤツの弟だとは思わなかったけどな。」


タカオはポカンとレイを見詰めた。

「・・・・お前は誰よりもジンに愛されてるよ。日本大会でのヤツをみて、本当にそう思った。」

タカオが少しだけ照れくさそうに俯いた。

「・・・・・・タカオが誰にでも愛されるのが・・・・俺には良く分かる・・・。」

空はいつの間にか夕焼けに染まっていた。
見事にオレンジ色に変わった幻想的な風景の中で
レイが真摯な表情で見詰める。

「・・・・・レイ?」
「・・・・・・・・・。お前のようなヤツは初めてだ。俺は・・・・・・。」

そこまで言いかけて、レイはハッとした表情をしたが・・・目を閉じて小さく溜息をつき
そしてこの上もなく優しく穏やかに微笑んで告白した。

「・・・・・今、ようやく分かった。・・・・俺は・・・・タカオ、お前が好きだ。」


「え・・・・・・?」

「どうしてお前の事がこんなに気になるのか、
お前といると、どうしてこんなにも穏やかな気持ちになれるのか・・・・。
俺にはずっと分からなかったんだ。でも今、ようやく分かったよ。
タカオ、俺はお前が好きだ。これからも、お前と共に在りたい。」

「レ・・・・イ・・・・。」
タカオにはレイが何を言っているのか、良く分からなかった。
好き・・・って・・・。共に在りたいって・・・今だってそうじゃないか?
一体何が?好きって・・・・もしかして・・・・まさか??

「・・・・良く意味が・・・・俺、なんかとんでもない勘違いをしていそうだ・・・・。
レイ・・・・好きも何も、俺とお前は仲間だし・・・俺だってレイのこと・・・・。」

「そうじゃない。俺が言っているのは・・・・。」
百聞は一見に如かず。ヘタな説明より・・・とばかりにレイは行動に出た。

タカオの肩を抱き寄せ後頭部に手を添えタカオの顔を上に向かせた。
こんなに近くで見詰め合ったことは初めてだった。
タカオの・・・下膨れのまだ幼い顔が硬直する。
その蒼い瞳は不安そうに、ただレイだけを見詰めていた。
そんなタカオの姿に・・・・。


ドキン・・・!!

突然、極度の緊張が走った。
まるで非常事態のようにレイの心臓がドキドキと鳴り響く。
今タカオを抱くこの腕さえ、自分のものではないかのように 
震えが止まらない事に、レイは驚きを隠せない。



バカな・・・?
キスなど今まで旅先で数え切れない程してきた。
だが今、タカオにキスしようとて・・・・こんなになってしまうなんて・・・・!?


それとも・・・・震えているのはタカオ・・・?




そしてゆっくりと・・・・ぎこちなく唇を合わせようとした。
タカオがギュッと目を閉じる。
互いの震える唇が、なかなかしっくり重ならない。
ようやく、少しだけ・・・触れ合うだけのキスを交わした。
お世辞にも上手いとはいえないキス。

タカオの唇は・・・・今まで交わしたどんな女の唇よりも柔らかく、甘かった。



「タカオ・・・。」
唇だけを離した至近距離でレイが熱っぽく囁いた。
「こういう・・・・事だ・・・・。」

「お・・・・俺・・・・・。」
予想もしていなかった事態にタカオはパニック状態だ。

たった今触れた場所が熱くて・・・・
レイの唇が、しっとりとタカオのそれを包み込んだ感触が甘くて
更に心拍数が増していく。


とにかくレイから少し距離をとろうとして・・・・タカオはバランスを崩した。

慌てて枝を掴んだつもりが空を切って・・・。

「あっ・・・!!」

次の瞬間、タカオの姿が消えた。枝から落ち・・・・・!





・・・・・・・・。



「・・・・大丈夫か?」

いつまで経っても激痛が訪れないのに目を開けてみると、
タカオの腕がレイにしっかり掴まれていた。

とっさにレイは両膝を枝に掛けてぶら下がり、タカオの腕を掴んでいたのだ。

ぶら〜ん・・・・・。



「大人しくしろよ?今引き上げてやるから。」
「お・・・おう・・・・。」
下を見ると・・・恐怖で縮み上がってしまいそうだ。
ここから落ちたらケガだけでは済みそうもない。


ところがレイは全く動じた風もなく鼻歌さえ歌いそうな雰囲気で

ひょいっと・・・・・。

次の瞬間には、タカオは先程の枝に座らされていた。
凄い力だ。


「あ・・・・ありがとう・・・・・・。」
「どういたしましてv。」
レイがニッコリと笑った。

つられてタカオも清々しく笑う。

「・・・どうやら今ので殻が取れたみたいだ・・・。」
タカオが語り始めた。

「俺さー。今まで誰かを好きになった事なんてないんだ。
女なんかよりバトルの方がずっと楽しかったし。

でも・・・。俺も・・・・・中国に来た辺りから・・・おかしかったんだ。
レイと一緒にいたくて。何度もレイに魅入っちゃったり。
どうしちゃったんだろう?って思ってた。でも気になって仕方がなくて。

今のキス・・・・。驚いたけど・・・・全然イヤじゃなかった。
むしろ・・・・嬉しかったんだ・・・・・。

ただパニクっちゃって・・・・。
だってそうだろ?恋なんてした事ねークセに、いきなり男を好きになっちゃうなんて。」

「タカ・・・オ・・・・。」
「俺も・・・俺も好きだよ。レイが。」

タカオの揺ぎ無い眼差しをレイの金色の瞳が受け止める。

「タカ・・・・オ・・・・。」
レイは身が震える程の感動に陥っていた。



今まで女とは・・・場合によっては男でも・・・たくさん付き合ってきた。
何処かゲームのような感覚で。

だが・・・・こんな純粋な気持ちは・・・はじめてだ。


はじめて・・・・本気で人を好きになった。
そう思える。
それがタカオで・・・・良かった・・・・・・。





「俺も・・・・はじめてだ。本気で・・・・好きになったのは・・・・。
タカオ・・・・・・・・・・・・・・・。
ありがとう。心から・・・・嬉しい・・・・・・。」



感極まってレイはタカオを抱きしめた。
「うわっ・・!レイ!!」

タカオは驚いて仰け反ってしまい、またバランスを崩した。
今度はレイの重みも加わり、重力に従って真っ逆様に・・・・・・。




・・・・・・・・・。



また、いつまで経っても激痛が訪れないので目を開けてみる。
何かに包み込まれている感覚・・・。これは・・・・。


「大丈夫か?」

レイは先程と同じく両膝を枝に掛けてぶら下がり、今度はタカオを抱きしめていた。

「あ・・・ありがとう・・・・。」
「どういたしましてv。」


そして二人、顔を見あわせ、

「ふふっ・・・・。はははははは・・・・!!!」

心から笑った。
二人の笑い声は幸せそうに、オレンジ色に染まったこの広い世界に木霊した。


「タカオ・・・・。好きだ・・・・大好きだ・・・・。タカオ。」
「レイ・・・俺も・・・。」



そしてもう一度唇を交わした。




黄昏時。

巨大な木の
見晴らしの良い枝に仲良くぶら下がりながら。


















この巨木はBBA宿舎から、かなり近い位置にある。

そのため、かなり目立つ。



この一件は全て
メンバー全員に見られていたとは・・・・

まだレイもタカオも気づいていない。




「タ・・・タカオ!!レイ!何て事を!お・・・男同士で・・・キ・・・キ・・・・・・!!」

「アメリカでは別に珍しいことじゃないネ〜。」

「ふぉっふぉっふぉっふぉ・・!!若いっていいですね〜!」

「・・・・・くだらん・・。」






そして彼等も、
これから長きに渡り、レイとタカオのバカップルぶりを見せ付けられる事になろうとは


まだ、気づいていなかった。







end

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かなり苦戦した挙句、ようやく出来ました。
ちょっと、くどいかな・・・。
そんなこんなですが私の中のレイタカはこんな感じですv。
レイはタカオ相手ではとことん!優しいですvv。

仁を出したのは予定外でした。
すらっとタカオの口から仁の名が出てしまって止まらなくなりました(汗)。
レイを連れてきたのは大転寺会長より仁が・・・
という方が萌えるので、ここだけ原作設定v。
ちなみに仁とレイの間には師弟愛程度しかありません!!
あまり細かい点は突っ込まないで頂けると助かりますv。
BBA宿舎近くに、そんな大きな木があったっけ?・・・とか・・・(爆)。

それではこんな長い話をここまで読んで下さり、ありがとうございました!

(2005.10.27)