「おお〜〜〜〜!!欠けてきた!!」
タカオが空を見上げ、大きな声をあげた。
「ワオ!」
マックスは口笛を鳴らした。
「素晴らしいです!!これぞ宇宙の神秘!!」
キョウジュは飛び跳ねんばかりの喜びよう。
「どーでもいいが・・。こんな時くらいパソコンは置いておいたらどうだ?」
と、レイが呆れる。
「何を言ってるんですか!!これを納めずして何を納めると言うんです!!」
「キョウジュは前の日食の時もそんな事、言ってたネ〜。」
BBAの4人は大はしゃぎだ。
しかし。
「貴様らは馬鹿か!!冬の夜に・・ここはロシアだぞ?
そんな軽装で・・・!!風邪をひいても知らんぞ!」
「だってよ、カイ!月食だぜ?しかも皆既月食!!
カイはワクワクしねーのか?熱くなってこねーの??」
「ふん、下らん。月食など、太陽と地球と月が一直線に並ぶだけの、ただの自然現象ではないか。」
「おお〜〜〜〜!!気づけばもう三日月くらいまで欠けてる〜〜〜!!」
カイの言葉はタカオに届いた様子もない。
カイは盛大に溜息をついた。
「タッカオ〜!ずっと上を見てたら首が痛くなるヨ!ボクみたいに寝ころぶと良いネ〜!」
「お、マックス、サンキュー!ホントだ!!この方がずっとよく見える!!」
「どれ、俺も・・・。」
三人は川の字そのままに寝ころんで、空を見上げてしまった。
キョウジュは未だ、大はしゃぎで寝ころぶどころではない。
「ったく。これだからガキは・・・。」
カイは一人、頭を抱えた。
しかし風邪でも引かれたら試合に響く。
カイは仕方なく、コートを持ってきてやろうと部屋に戻ろうとしたその時。
「さすがにロシアの夜は冷えるな。タカオ、こっちへ来い。」
レイの言葉にカイはピタッ・・と反応を示した。
「え?こうか?」
「違う。もっと・・・。」
レイは寝ころんだ体勢のまま、タカオを抱き寄せた。
「ほら、こうすれば暖かいだろ?」
腕枕ならぬ、肩枕状態でレイはタカオを抱きしめた。
そして二人で空を見上げる。
二人分の体温で暖かくて、そして眺めも最高。
「ホントだ。」
至近距離で見つめ合い、幸せそうに微笑みを交わす二人。
カイの血管がブチ切れた瞬間だった。
「朱雀、遠慮はいらん。全てを焼き尽くせ。」
次の瞬間、ドランザーがレイに襲い掛かり、あっという間にレイは黒焦げに。
しかし不思議な事に、レイに抱かれていたタカオは無傷だった。
「ふん・・。」
華麗にドランザーをキャッチしたカイは、今度はレイに代わってタカオを抱き寄せようとしたが。
「タイガーファング!!」
白虎の牙が見事にカイを・・・。
「ふふふ・・。いいだろう。貴様とは一度、キッチリと決着をつけねばならないと思っていた。」
カイはユラリ・・と立ち上がる。
「それはこっちのセリフだ。」
対峙する二人。
背後には朱雀が、白虎が、炎が、雷が!!
「タカオ、ここはちょっとうるさ過ぎるヨ。あっちで見るネ!」
マックスがコートを持って部屋から現れた。
そしてちゃっかり、二人で一つのコートにくるまって、マックスはタカオを抱きしめた。
「あったかいネ〜。タカオ、ほっぺがプニプニで、気持ちイイ〜〜!!」
「おわ、マックス、やめろったら!!くすぐった・・・ッ!!」
「朱雀。」
「白虎。」
「ギャ〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
「やはり、こうなるネ・・・。」
「いつかは来る闘いだと思っていた。」
「貴様らに仲間の意義を教わったばかりだというのに・・残念だ。」
殺気ムンムン、それぞれの聖獣のオーラを漂わせ、3人はベイを構えた。
激しくぶつかり合う視線。
そして。
「3,2,1・・・・go shoot!!」
「何が一体、どーなってるんだ?あいつら。」
「さあ?それよりタカオ、もうすぐ完全に地球の影に月が隠れますよ!」
「あ、本当だ!!」
聖獣の光が乱れ舞うのを他所に、タカオは寝ころんで空を見上げ
キョウジュはタカオの隣でパソコンを作動させながら、空を見上げた。
「すっげー・・・・。」
「はい・・・まさに宇宙の神秘・・・。」
「キョウジュ、さっきからそればっか。」
「何を言うんですか、タカオ!!
部分月食ならともかく皆既月食は、滅多に見られるものじゃありません!しかもこんな良い天気で見られる確率は・・・!!」
「はいはい、そんな事は後で聞くからさ。それより今は紅い月をゆっくり堪能しようぜ?」
タカオはニッコリと笑った。
そしてタカオの隣で一緒に寝ころぶよう、促した。
その笑顔に、キョウジュは一瞬、我を忘れてタカオに見惚れてしまって。
「どーしたんだ?キョウジュ。」
「い、いえ・・・。」
タカオの指摘に慌ててキョウジュは我に返ると、おずおずとタカオの横に寝ころんで、共に空を見上げた。
「綺麗ですね・・・。」
「ああ・・・。」
それはまるで恋人同士のような会話。
キョウジュは今更ながら、胸がときめくのを感じてしまった。
その一方で。
四聖獣のうち朱雀、白虎、玄武の闘いは続いていた。
勝ち残ったのは誰?
しかし、どう考えても勝者はキョウジュ?
end
2011年11月10日の皆既月食を堪能して、思わず妄想して日記に上げた話です。
BBAチームで旅していた途中で皆既月食があったら、こんな感じかな〜と。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました!
(2012.12.11)