ある晴れた日。
木ノ宮邸、庭先。



縁側に座ってタカオは一人シュート練習をするカイをぼーっと眺めていた。


「あのさー、カイ・・・。・・・俺のバカ面・・・そんなに見たかったのか?」

タカオがぼんやりと話しかけた。

「・・・?」
「お前、昨日言ってたよな〜。それって・・・夜も眠れないくらいに?」
「・・・・な・・・!」

思わず言葉に詰まるカイに構わずタカオが話し続ける。
「俺はさ〜。会いたかったよ。お前に。会って・・・バトルしたら・・・・分かるかな〜って・・・・。」

「貴様、さっきから何を言っている。」

カイにはタカオの真意を掴みかねた。

「俺・・・・お前の事・・・好きになっちまったみたいだ。」
「は!?」

その瞬間、カイの頭の中は真っ白になってしまった。

「今、何て言った?」
「だから。俺、カイのこと、好きになっちまったみたいだ。」

好き?好き・・・って・・・。
そうか!仲間だ!
バイカル湖で俺はコイツに仲間の意義を教わった。


「そうか。まあ・・・仲間だしな。」

カイは優秀な脳みそをフル回転させ、現実逃避としかいい様のない結論に辿りつく。
タカオの言う「好き」が最悪の意味だと言う事に気付いているのかいないのか。
だが、タカオは構わず

「違うってば。恋愛の「好き」。男同士なのに・・・変だろ?
でもさ〜、お前って・・なんかこう・・・・その辺の女なんかより、よっぽど色っぽいっつーか・・・。」

とんでもない事を淡々と語るタカオに、遂にカイがキレた。

「貴様!俺を侮辱する気か!!」
「違うって。俺だって悩んでんだ。男を好きになっちまうってやっぱ普通じゃねーし。」

どこまでもマイペースなタカオ。

「・・・・・二度と悩めないようにしてやろうか・・・。」


カチャッ・・・・
殺気の炎を身に纏い、カイがドランザーを構えた。

「わ〜〜〜〜!!待てったら!!」
「・・・・フン・・・!貴様の戯言になんぞ付き合ってられん。
そんな事を考えている暇があったら、奴等の攻略法でも考えるんだな。」

とりあえずドランザーを収め、カイが吐き捨てるように言った。
だがタカオは動じたふうもなく、イタズラっ子のような縋るような瞳で続ける。

「・・・・じゃーさ。一回だけ、やってみねぇ?」
「何をだ。」
「だから・・・・キス。
俺、バカだし。ひとつの事悩んでると他の事考えられねーもん。
な?モノは試しだ!お前だって一回やってみたら俺のこと好きになるかもしれねーだろ?」
「なるか!!
・・・・やはり貴様の馬鹿は一度死なんと治らんらしい。安心しろ。一瞬であの世に送ってやる・・・・。」

再び殺気の炎が燃え盛る中、カイはゆらり・・とドランザーを構えた。

「じゃーさ、俺もシュートすっから。勝った方の言う事を聞くってのはどうだ?
俺が勝ったらキスする!お前が勝ったら・・・・好きにしていいよ。」

ここまで言うとタカオが急にニヤニヤして

「・・・・・「好きにして・・v」ってちょっとエロいな〜vv。
「カイ、俺をどうする気なの?(←キラキラお目々)」なんてなーvv。」

そしてタカオはお気楽そうにカカカカカカッ・・・と笑った。

「・・・・・〜〜〜〜!!
貴様・・・・俺が直々に地獄へ叩き落してやる!!覚悟しろ!!殺れ!ドランザー!!!」
「負けるかよ!ドラグーン!!!」


木ノ宮邸の庭に設置されたベイスタジアムに青と白のベイがシュートされた。
激しいぶつかり合い、青龍、朱雀が現れて必殺技の応酬・・・・。

だが、ここぞという時のタカオは敵なしである。
一方カイは怒りに任せたバトルをしてしまったので、どうしても・・・。

最後まで回っていたのはドラグーン。

「ま・・・・負けた・・・・・・・。」
「・・・・かっ・・・・・た・・・・・・・?」

カイはガックリと膝をついた。

「カイ・・・。」
「約束は・・・約束だ・・・・。」
カイは伏せ目がちに瞳をそらした。

うわ・・・マジ、色っぺー・・・。

タカオはゴクンと生唾を飲み込んでカイの肩に手を掛けた。
カイも観念したのか、タカオを見上げる。

だが。

「・・・・・・え〜っと・・・そんなに睨まれると・・・。もうちょっと・・・なんて言うかな〜。目を閉じるとか・・・。」
「そんな事は俺の勝手だ。それとも睨まれるとできないか?・・フフン・・・。」

カイは鼻で笑った。
これにはさすがのタカオもカチン!ときた。

「ムム・・・。よし!やってやろーじゃねーか!!」
「・・・・・・。」
「いくぞ?」
「・・・・さっさと済ませろ。」

ちくしょー、カイのヤツ、余裕だぜ・・・・。
俺の方がドキドキしてるって・・・・。

タカオは意を決して、ゆっくりと・・・・唇を合わせた。
カイの唇は柔らかくて・・・甘くて・・・・。
タカオは夢中になってカイを感じた。
背中と後頭部に腕を回し、体を密着させるとほのかに汗の匂いがして。
夢にまで見たカイが、今、自分の腕の中にいるのだと・・・実感した。
抱きしめると・・・カイの体は意外に華奢な事に気付く。
こんなに華奢な体で・・・精一杯強がって。そう思うと無条件に愛しくて。

タカオは耐え切れず舌を差し入れた。
ビクッ・・・と
カイは思わず唇を離そうとしたが、タカオはガッチリと後頭部を押さえ込んでそれを許さない。

「・・・っふ!・・・ん!」

タカオも深いキスなど初めてであったが、本能の赴くままにカイの舌を探し絡めた。

ちゅく・・・・。

ゆっくりと絡めて擦って・・・生暖かな柔らかい舌を存分に味わう。
飲み切れない唾液が口の端を伝っていく。
息ができなくて苦しくて・・・・でもあまりにも甘美で・・・・恍惚状態になってしまう。
キスがこんなに気持ちイイなんて。タカオは驚きと喜びを隠せない。
しつこいくらい充分カイを味わって・・・タカオはようやくカイを開放した。

「はぁ・・・・はぁ・・・・」
口の端を手の甲で拭うとカイは

「貴様・・・・。」
涙で潤んだ瞳でタカオを睨み付けた。
まだ息は荒く、目元は朱に染まっている。

そんなモノを見せられたら・・・・。

「カイ・・・・・。」
タカオはまだ恍惚からさめやらぬ表情。

「俺、やっぱりお前の事、好きみたいだ。だって・・・・シたくなってきたし。」
「・・・何をだ。」
「何って・・・・○ックス。」
「〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」

カイは心の底から思わず聞き返してしまった事を後悔した。

「な?シよーぜ?」
「だ・・・・誰がスルか〜〜〜〜!!!」
「じゃーさ、またバトルで決めるか?俺が勝ったらスル!お前が勝ったら・・・・・・

ギャ〜〜〜〜〜〜ッ!!!

「フン!!」


カイは見事ドランザーをキャッチするとスタスタと立ち去ってしまった。


後には黒焦げの焼死体と化したタカオが残されていた。










「タカオタカオ!どうしたんですか?」
「ちょっとー!どうやったらこんなに火傷すんのよー!」

「は・・・はははは・・・・ちょっと・・・・な。焼き鳥食おうとして・・・。」
「もう!バカなんだから!」
手荒だが完璧に手当てしてくれたヒロミ。

「これでは暫くバトルは無理ですね。
もうすぐレイやマックスが来るというのに・・・・・。」

それを聞いて、タカオはピクッと反応した。

そうだった。来週にはあいつ等が・・・・・。
あいつ等が来る前に・・・何とかしねーと・・・・・。

タカオはよっ・・と飛び上がって立ち上がり
拳を握り締め、なにやら決意でもしているかのように一人頷いた。

「タカオ?」

「大丈夫!これくらいの火傷、どーって事ねーよ!気合で治してみせるぜ!!」
腰に手を当てて大威張りでガハハハハハッ・・・!!と笑うタカオ。

「手当てしてくれてありがとな〜!」
フランケンシュタインさながら。体中包帯ぐるぐる巻き状態のタカオは嬉しそうに走り去ってしまった。


呆気に取られ脱力するキョウジュとヒロミ。

「・・・・・・・。」
「キョウジュ。アンタも苦労が絶えないわね〜・・・。」
「ええ・・・まあ・・。でも、もう慣れました。」

そして二人、乾いた笑みを浮かべ
盛大に溜息をついた。






end

novel top

初めはお遊びのつもりで日記に書いていたものですが
完成してしまったので上げる事にしました。
バカな話ですいません・・・・・。

いつの間にやらタカオのペースにはまって翻弄されちゃうカイたんを書きたくて。
この先どうなるんでしょうね〜。
深く考えていませんが、タカカイの馴れ初めって案外こんな感じかもしれません(笑)。

それではこんな話にお付き合い下さり、ありがとうございました!
(2006.3.6)