青い空。
白い雲。
暖かな日差し。
今日もとってもいい天気!
なのに。
なんだか・・・・。
落ち着かないんだ。
世界大会から帰ってきて、ずっと・・・・。
家にいてもモヤモヤが募る一方で。
「じっちゃ〜ん!俺、ちょっと出かけてくる!」
せめてもの気分転換にと、外出してみた。
よく行く公園。広場。
どこに行ってもベイバトルに興じる子供たち。
それを一通り、ひやかして回る。
どこでも「木ノ宮タカオだ〜!」と大歓迎。
調子に乗って何度かバトルして。
そして「頑張れよ〜!」と手を振って・・・・またブラブラ。
俺は。
何やってんだろう。
つまらない。
つまらない・・・?
違う・・・ような気がする。
そうじゃなくて。
祭りの後の虚しさ?
それも・・・・違う・・・・。
そうじゃない。
そうじゃなくて・・・・・・。
すごく・・・・気になってるんだけど
一小学生の所へは、何にも情報なんて入ってこなくて。
だから、イライラするんだ・・・・。
何かして紛らわしたいのに
それもできなくて。
あれから。
マックスは取りあえず・・・って感じでアメリカへ行っちまってから、なかなか帰ってこない。
キョウジュはもともと家が近いから、たまに会ったりする。
レイはあのあと白虎族の村へ帰ってしまった。
まあ、レイのことだし、そのまま村に収まるとは思えないんだけど。
カイは・・・・・よく分からない。
総一郎の爺さんの件で色々大変だと思うんだけど、あいつはマメに連絡くれるようなタイプじゃないし。
あいつ。
自分の弱みは絶対人に見せないから。
自分の中に溜めて溜めて・・・・溜め込んで・・・・・・。
人前では強がって見せるから。
どうしようもなくなった時でさえ
誰にも話さず、自分だけで何とかしようとするから。
心配だ・・・・。
大転寺のおっちゃんも父ちゃんも、公にならないよう何とかするって言ってたけど
カイに危害が及ばないように、火渡がお仕舞いになったりしないようにするって言ってたけど。
そのお陰か大きなニュースにはなってないみたいだ。
でも火渡の株が大暴落したって・・・・じっちゃんが言ってたっけ。
俺、株の事なんて、わかんねーし・・・・・。
・・・・・・・・。
きっと・・・大変な事なんだと・・・・思う。
どうしてんのかな〜・・・・。
大丈夫・・・かな・・・・・・。
また・・・・どっか、迷い込んで・・・・ないよな・・・・・・。
いつの間にか夕焼けが見事な時間になっていた。
カイとはじめて会ったのは、ちょうどこんな時間。
タカオは草むらに仰向けに寝転んで大きく伸びをすると、オレンジ色の空を仰いだ。
「カイ・・・。」
目を閉じて
思い出すのは楽しかった旅、掛け替えのない仲間の姿。
そして・・・・・・・。
「こんな所でうたた寝とは・・・・相変わらず能天気なヤツだ。」
突然の聞き覚えのある懐かしい声に、タカオはガバッと飛び起きた。
「カイ!」
「どうした。まるで幽霊にでも会ったような顔をして。」
「あ・・・いや・・・その・・・今、さ、みんなどうしてるかな〜って考えてたから。
そしたら突然お前の声がして・・・。」
「ふふ・・・・。元気そうだな。」
「まあな。カイは・・・・・あれからどうしてた?」
「別に・・・どうもせん。」
「別にって・・・・大丈夫だったか?火渡は?総一郎の爺さんは?」
タカオが必死の形相で詰め寄った。
「・・・・・・・・・。お前・・・・・・。」
どうやらタカオが相当心配していたらしい事に
カイはこの時初めて気がついた。
「・・・・・火渡は大丈夫だ。全て水面下で何とかなった。爺は引退し、代わりに父が戻ってきた。」
「お・・・お父さん?」
「ああ・・・・。お陰で鬱陶しくて敵わん。」
「お父さん・・・て・・・・・。」
「そうだ。昔、俺を捨てた・・・・あの父だ。」
「・・・・・・・・・。だい・・・・じょうぶ・・・・・か?」
「何が。」
「だからお前は・・・大丈夫かって!」
「・・・・・・。馬鹿が・・・・・。大丈夫にきまってるだろう・・・。
そう何度も貴様に心配かけてたまるか。」
カイは半ば呆れ顔で答えた。
嘘だ。
そんなにいろんな事があったのに、大丈夫な筈がない。
一度大転寺のおっちゃんに聞いたことがある。
カイも・・・相当・・・・立ち回って・・・・・家も会社も大変だけど・・・
おっちゃんも最大限協力すると・・・。
お爺さんがあんな事になって
断絶状態のお父さんが帰ってきて
カイの心の中は・・・・・・・・きっと・・・・・・・・・・・・。
でも。
でも・・・・・・。
今、目の前にいるカイは。
一緒に旅をした、あのいつも張り詰めた感のあるカイとはどこか違って
穏やかな・・・・表情をしていた。
世界大会から帰ってきて・・・今までの間に
カイはカイなりに
それを・・・・・・乗り越えたんだ。
「そうか・・・。・・・・・・。
へへっ・・・・・・。そうだよな。」
俺も、うかうかしてらんねー。
俺だけあのまま立ち止まってた。
カイはちゃんと前へ進んでる。
カイは・・・・やっぱり・・・・・・・強い・・・・・・・。
あの時。
もう一度黒朱雀のビットを渡された・・・あのロシアでのバトルの時に
もう振り回されないって・・・・決めたんだ。
カイはカイの道を行くって。
その言葉の通り・・・・カイは・・・・・・・。
そんなお前を、俺なんかが心配なんてしたら・・・・失礼・・・だよな。
でも。
なによりも。
良かった・・・・・。
カイが元気そうで・・・・本当によかった!!
「なあ、カイ、せっかく久しぶりに会ったんだ。バトル、しようぜ?」
「貴様のバトル馬鹿も相変わらずだな。
いいのか?
久しぶりのお遊びではすまなくなるぞ?」
カイが不敵に笑う。
その憎たらしい顔が、懐かしく・・・・嬉しくて。
「それこそ願ったりだ!
ちょうど腕がうずうずしてたトコなんだ。
久しぶりに思う存分!コイツを暴れさせてやれそうだぜ・・・・。」
ポケットからドラグーンを取り出してカイに突き出した。
「カイこそ、そのカッコイイ服がヨレヨレになったって知らねーぞ?」
「ほざけ・・・・。」
カイもドランザーを取り出し構えた。
その様子をタカオが見守る。
カイとこうして、またバトルできる事が嬉しくて嬉しくてたまらない。
カチャッ・・・・。
闘気と、バトルに喜びを感じるもの同士の、輝き溢れる瞳がぶつかり合う。
「3・・2・・1・・・・go shoot!!」
「いけ〜〜〜〜!!ドラグーーーーン!!
「殺れ!ドランザーーーー!!」
図らずも。
そこはカイとタカオが初めてバトルをした場所。
カイが・・・・
家や会社のゴタゴタに疲れて
久しぶりに・・・一息つきたくて、できればタカオの顔を一目見たくて
その場所へやって来たことは、勿論秘密である。
確かにあれから大変ではあったのだが
バイカル湖以来カイは変わった。
何が正しくて何が間違っているのか。
真の強さとは何なのか。
俺はもう・・・・間違ったりなどしない。
この正真正銘の馬鹿に出会えた事が
全てを変えた・・・・・・・・。
遥かな空へ
青龍と朱雀が絡み合う。
カイはバトルのさなか
密かに満足げに・・・
幸せそうに微笑んだ。
end
つれづれなるままに 日ぐらしすずりにむかひて・・・・
まさにそんな感じでな〜んとなく書いてしまいました。
できてしまったので上げてみます。最近そんなのばっかですね。
でもまあ・・・無印その後としてなんとなく頭にあった話ではあります。
これは「カイタカ」というより「カイとタカオ」。
双方とも惹かれ合っているんだけど自覚はないみたいですね。
はじめて会ったこの場所で・・・。
このネタ使うの、何度目でしょうか。すみません・・・。
それから、この話は2002へは続いていないものと思われます。
02では世界大会後初めて
「攻めるんだ!木ノ宮タカオのバトルを忘れるな。」
で再会するんでしたっけ?そんな訳でこれはあくまで無印のみの話です。
ここまで読んで下さりありがとうございました!
(2006.3.31)