その時、カイは寮の階段を上っていた。
ひと気のないガランとした廊下、階段。
今は夜。大抵の生徒は眠りについている時間。
何故、そんな時間に?
それは誰もいない場所で、ドランザーを操っていたから。
朱雀を舞わせていたから。
それはカイの日課だった。
そして今、皆が寝静まった寮の階段を一人上り、自室へと帰るところだった。
ここは名門私立中学の学生寮。
お坊ちゃま学校と呼ばれるだけあって、裕福な家庭の優秀なご子息が多く通っていた。
そんな学校の寮は、やはり高級マンション並みの施設だった。
階段一つを取ってみても豪華だった。
その階段の踊り場には、一階から最上階まで一続きの大きな窓があって
今日は美しい月がよく見えた。
ちょうど、その踊り場へ来た時だった。
「久し振りだな、カイ。会いたかったぜ・・。」
階段の上を見上げると、そこには月明かりに照らされたタカオの姿。
予期せぬ来訪者に、さすがのカイも驚きを隠す事は出来なかったようだ。
珍しく瞳を見開いている。
そんな表情をされて、タカオはなんだか嬉しくなった。
しかし返された言葉はそっけないもの。
「貴様、何故ここが・・・。」
「何故って・・そりゃ、ないぜ。
俺とスるって約束したくせに、さっさと行方をくらましやがって。
それにしてもすげーな。さすが金持ちばっかが通う学校の寮だけあるぜ。
まさかお前が集団生活してるなんて、誰も思わないもんな〜!」
タカオは寮の内装を見回して、その豪華さに
そして本当にカイが、そこで生活していたという事に心底驚いて言った。
カイと集団生活ほど似つかわしくない組み合わせはないだろう。
素直に驚いていたタカオにカイは。
「スる?・・・お前と?」
「なんだよ、忘れちまったのかよ!
俺、こんなに必死になってお前の事探し当てたのに!!
お前とシたくて会いたくて・・・俺、気が狂いそうだったのに・・・・!!」
怒りの中に失望と哀しみを込めた瞳で訴えるタカオに、カイは再び瞳を見開いた。
タカオは、すぐに思い直したようにニカーッと笑うと。
「ま、いいか。これからスればいいんだから。」
「な、ちょ、ちょっと待て、木ノ・・・!」
「なに焦ってんだよ、いきなりだと都合でも悪いのか?お前らしくもない。」
タカオは挑発的な瞳を真っ直ぐにカイに向ける。
「どこでもいいぜ?ここでも・・・どっか、いい場所があるなら・・別の場所でもな。」
タカオは不適な笑みを浮かべながら
ゆっくりとジャケットに手をかけるべく、その手が動き出した。
一方、カイには話がサッパリ見えなかった。
まず、「スる」とは一体何を「スる」というのだろう?
まさか・・・アレではあるまい。
しかしタカオは今まさにジャケットを脱ごうとしているではないか。
そして先程のタカオの表情、言葉。
「お前とシたくて会いたくて・・・」と言った時のタカオの瞳には、怒り以外のものが確かに見て取れた。
普通、ただの昔の仲間と会うのに「シたくて会いたくて気が狂いそうだった。」などと言うだろうか?
・・・・・・・・。
やはり、「スる」とはアレの事なのか!?
しかし、どう記憶をたどってみても、タカオとスる約束などした覚えはない。
タカオとデキるなら、それこそ願ってもない事なのだが・・・。
カイはタカオが欲しかった。
いつの頃からか、ずっと前から・・喉から手が出るほどに欲しかった。
あの崇高なる魂を手に入れたくて。
触れて、抱きしめて、キスをして、それから・・・・・!!
このまま、傍にいたら、タカオに何をするか、自分がどうなってしまうのか・・・
カイには正直、自信が持てなかった。
勿論、行為のみがしたかった訳ではない。
気持ちがそこになければ、そんなものは何の意味も無い。
だが・・・タカオに対するこの気持ちですら
タカオにとっては負担、迷惑、拒絶
気持ち悪い、受け入れられない、理解不能・・・・そんなものでしか無いだろう。
だからタカオの前から消えたのだ。
このままタカオの傍にいたら、己の苦しみは目に見えていた。
これが己の努力で勝ち得る事ができるものなら、カイはどんな努力でもしただろう。
それこそ、死を覚悟しなければならないような試練にだって、喜んで立ち向かった事だろう。
しかし、これは・・・・考えるまでもなく、そういう類のものではない。
求めても求めても手に入るはずのない光─────────。
諦めるしかなかった。
カイのように世間一般とはかけ離れた育ち方をした訳でもない
幸せな愛の溢れる家庭で育ったタカオだ。
・・・意外にもタカオは家族運には恵まれていないが
あの祖父の下で育ち、離れてはいても父や兄の愛情をいつも感じて育ったタカオに
こんなマイノリティーな・・・同性愛など・・・あまりにも無縁なものだ。
せめて・・・陰ながらタカオの幸せを見守れるようになるまでに己の精神を高める。
そう、心に誓うしか・・・なかったのだ。
だから、また祖父の言いなりになどなりたくなかったが
セキュリティの厳重さでは有名だと聞いたので、この寮にも入ったのだ。
簡単にタカオや昔の仲間が押しかけてこないように。
ここで一人、己を鍛え上げるために。
なのに、だ。
タカオの方から押しかけてきた。
どうしたらいい!?
そして、そもそも・・・・一体どうやってこのセキュリティを突破したんだ。
カイは思ったままを聞いてみたが。
「入り口で、カイに会いに来たから入れてくれって頼んだら、あっさり入れてくれた。
俺の事、知ってたみたいでさー、握手してくれって頼まれて
しかも子供にあげたいからって、サインまで!俺ってもう有名人??」
ニカニカと笑うタカオ。
な、何が「厳重なセキュリティでは有名な・・」だ!!
カイは密かに握り締めた拳を震わせた。
「そんな事より・・・早くシようぜ!?」
「・・・ま、待てと言っている!!」
カイは目一杯の理性を振り絞って叫んだ。
落ち着け!火渡カイともあろう者が・・・!
とにかく・・・コイツの真意が分からん。
スる約束など覚えが無い。
木ノ宮はただ、シたくなった?
有り得ん。木ノ宮はそういうタイプではない。
あの金の瞳の色情魔ならともかく。
普通の人間であれば、まずは意思の疎通が第一だろう。
そんな気持ちのやり取りも当然、覚えが無い。
しかし・・・心臓が高鳴りすぎて、口から飛び出てきそうだ・・。
コイツは・・気でも狂ったのか?
それとも、これは夢なのか?
「・・・??ここじゃ、ダメか?」
タカオはいきなりカイに大きな声で叫ばれてキョトン・・としてしまって
ジャケットにかけていた手が、思わず止まってしまった。
「あ、当たり前だろう、こんないつ、誰が来るとも知れない場所で・・・。」
俺は・・いつも通りの口調で言えただろうか?
「・・・ま、確かにここじゃ狭いし、誰か来たらヤバイよな。じゃ、どこでスる?」
どこでって・・どうしたら・・いい?
こんな形でこんな事になろうとは、思ってもいなかった。
なのに・・・いや、今はそんな事を考えている余裕などない。
しかし。
ほんの少し前まで、こんな事が俺の身に起きようとは思ってもいなかったのだ。
それも欲して欲して止まなかった相手に・・・
いきなり、「どこでスるか?」と言われて・・・どう、答えれば・・・!?
俺は、混乱している・・・
それは認めるが、それを表面に現してないだろうな・・・!?
「何考えてんだよ、カイ。
まさか逃げようなんて考えてねーよな?・・つっても、俺が逃がさない。
絶対離れないから覚悟しろ!?何しろようやく捕まえたんだから!!」
「逃げる、だと?」
あんなにゴチャゴチャと次々浮かんだ思考。
しかしその瞬間、カイの思考は停止した。
「逃げる。」
それはカイが最も嫌いな言葉の一つだ。
それは最大の挑発。
カイの心は凍りつき、そして燃え上がる。
残虐な笑み、そして揺らめく内なる炎。
「貴様・・・誰に向かって言ってる?」
燃えるような紅い瞳がタカオに向けられた。
しかし、だ。
タカオは相変わらずの調子で続けた。
「だよな。で、どこでスる気だ?」
・・・知らんぞ・・俺は・・・どうなっても・・・。
誘ったのはコイツだ。
しかもこんな挑発・・・・。
これは手袋を投げつけられたに等しい。
もやは受けて立つ以外にないだろう。
ここはカイの通う超名門私立中学の学生寮、階段の踊り場。
この階段を上がって・・・少し行けば・・・・。
「・・・ついて来い。」
カイはタカオの居る方向へ、階段を上り始めた。
「どこへ行く気だ?」
そっけなくカイはタカオの横を通り過ぎた。
「ついて来ればわかる。」
タカオは慌ててカイの後を追う。
「・・・それにしても、本当にすげーな?ここ。ホテルみたいだ!!」
「・・・・・。」
そして辿り着いた場所はカイの自室。
「・・・・ここって?」
「俺の部屋だ。」
「・・・・・・。ここでスんの?」
大きな蒼い瞳を更に見開いて訊ねるタカオ。
「不満か?」
「いや・・だって・・・ここならさっきの場所とそんなに変わらない・・・っつーか、お前、自分の部屋がどうなっても良いのか?」
「構わん。多少汚れても・・明日、クリーニングすれば済む話だ。」
「クリーニング?」
タカオは素直に真ん丸に瞳を見開いている。
ここまで来て。
さすがのカイも、どうやら会話がかみ合ってない事に気付いた。
「・・・木ノ宮・・・。一つ確認していいか?」
「?なんだ?」
「「スる」とは・・何をするんだ?」
「え?バトルだろ?」
「バ・・・・・ッ!?」
バトルだと〜〜〜〜〜!?
「スる」、「どこでもいいぜ?」と挑発的な瞳でと言われれば
しかもジャケットに手をかけて、脱ごうとするそぶりを示されれば
普通はその意味は一つしかないだろう!!
・・・・・。
コイツのおとぼけ天然ぶりも、ここまで来ると犯罪レベルだ!!
俺は・・・どうしたらいい!?
カイは半ばパニックになりながら、頭を抱えこみたくなってしまったが
・・・一度、深呼吸をして心の中で仕切りなおした。
そして疑問に思った事を一応聞いてみる。
「貴様、さっき、ジャケットを脱ごうとしていたが・・・あれは何故だ?」
「え?ジャケットの内側にドラグーンをしまってたから、それを取り出そうとしたたんだけど。」
それを聞いて、尚更カイは頭を抱え込みたくなってしまった。
そしてこの、根っからの天然ぶりを恨めしく思いながら。
・・・・焦ったところで始まらん。
もう、こうなってしまっては・・・押し切るしかあるまい。
どんな運命の悪戯か知らんが・・・諦めるんだな、木ノ宮。
心は後だ。
まずは体を手に入れる。
ここまで考えると、カイは暗い笑みを浮かべた。
・・・・そうだ・・・。
何故、俺は最初からこうしようとしなかったのだろう。
元々俺はそうやって欲しいものを手に入れてきた筈なのに。
まあ、いい。
幸いにしてお前の方から俺の懐に飛び込んできた。
お前が俺を挑発して、俺本来のあり方を思い出させてくれた。
俺は・・・あのシェルキラーの頃のように
欲しいものをどんな手段を使ってでも手に入れるだけだ。
存分に可愛がってやろう。
俺がいなくては生きていけないようにしてやろう。
・・・・・・・・・・・・。
しかし・・・性の奴隷になった木ノ宮は、その光を輝かせ続ける事ができるだろうか。
一瞬、カイは躊躇した。
体を手に入れても・・どうしても心だけは俺のものにできなかったら?
ショックのあまり、その光が失われてしまったら?
カイは唇を噛みしめながら、心の中で精一杯首を振った。
そして非情に徹っするべく、その心を凍らせた。
知ったことか。
誤解を招くような事をして、挑発してきたのはコイツ。
どうなろうとも・・・悪いのはコイツ。
・・・・・・・・。
俺を闇から救い出したのもコイツ。
俺に・・・光の眩しさを、尊さを教えてくれたのも・・・・コイツだ。
お前に出会いさえしなければ、俺はこんな想いに囚われずに済んだ。
お前を手に入れたいなどと・・・思わずに済んだんだ・・・・。
そして俺はいつまでも闇の中で修羅の中で・・・・お前のいない世界で・・・・。
カイは一度自嘲気味に微笑むと、次の瞬間には、その顔から表情が消えた。
いつものポーカーフェイス、というよりは感情など欠片も無い冷徹な仮面を被った人形。
「・・・カイは、なんだと思ったんだ?」
タカオは依然として、素直に目を丸くしてカイに問いかける。
しかし、カイはその問いはサラリと無視して別の提案をした。
「今日はもう遅い。バトルは明日にしよう。」
「明日〜〜〜〜〜!?」
タカオは不満そうにぼやいた。
しかし切り替えが早いのもタカオの長所の一つだ。
「ま、それもいいか。お前の居場所は突き止めたし。で、泊めてくれるのか?」
「ベッドは一つしかないが、それでいいか?」
「・・・カイさえ良ければ。懐かしいな〜!世界大会の時みたいだ!!
あ、俺、寝相とかいびきとか酷いけど・・・知ってるよな?いいのか?」
ニコニコと・・何も知らない子羊のようにタカオは笑う。
「構わん。ただし・・・。」
「ただし?」
カイは、いきなりタカオをベッドへ押し倒した。
そして自らも、すぐさま乗り上げてタカオを組み敷く体勢をとる。
「・・な、なにすんだよ!」
「・・・・。寝所を共にする者達がスる事は一つだ。
お前はここへ泊めろと言った。それはこういう意味でしかない。」
「ちょ、待って・・・止め・・・っ!!」
カイはタカオに馬乗りになり、その両手もカイの力強い腕で縫いとめていた。
タカオには体勢に分がなさ過ぎる。
「なかなかの姿だな、木ノ宮・・・。」
ニヤリ、と笑みながらカイは唇を下ろしていく。
この状態。
さすがのタカオも、これから自分の身に何が起きようとしているのか分かったようだ。
「・・・やめろ!何考えてんだよ、カイ!お前、どうしちゃったんだよ!」
タカオも必死だった。
「俺はどうもしていない。至って正気だ。そして今から・・・お前を手に入れる。」
目と鼻の先で、息がかかるほどの至近距離で
その紅い燃える瞳が、カイが本気である事を何よりも物語っていた。
「い、嫌だ・・・こんなの、絶対、嫌だ!!」
「諦めろ。大人しくしていれば可愛がってやる。」
こんな・・・こんな言葉を事もあろうか、カイのその口から聞く事になるなんて
いつも厳しくて、毒舌ばかりだけど・・・真実しか語らない、その口で。
こんな事が自分の身に起きるなんて、ついさっきまでタカオは考えてもいなかった。
それに。
こんな事をするのは、大人になってから、ずっと先の話だっただず。
タカオも健全なる多感な時期の少年だ。
ソレに対して興味が無いわけではない。
しかし。
違うだろう、どう考えたって。
まず、お互いの気持ちがあって、そして一つづつステップを踏んでいくものじゃないのか?
いきなり・・・こんな事が・・・・!!
「一つ、聞かせてくれ。」
タカオは真っ直ぐに、その蒼く澄んだ瞳をカイに向けた。
「・・・・なんだ。」
紅い瞳がタカオを見下ろす。
タカオはその鋭い光を放つ紅い瞳に臆する事もなく言った。
「お前は俺が好きなのか?」
僅かだが、カイの無表情がピクリ・・と動いた気がした。
「・・・・そうだと言ったら?」
「質問してるのは俺なんだけど。」
一瞬だが、カイのその端整な顔に苦悩の色が走ったように見えた。
これはタカオの気のせいだろうか。
しかし、カイは。
「ふ、ふふふ・・・・はははははは・・・・・!!」
いきなりカイが笑い出すので、タカオは驚きを隠せなかったが。
「俺が・・・貴様を?ふふ・・・。なかなか笑わせてくれる。
馬鹿も休み休みに言うんだな。
思い出せ。誘ったのは貴様だ。
俺とシたいと言ったのはお前。
そして意味ありげな瞳で俺を睨みつけ、その服を脱ごうとしただろうが。
俺は、たまにはそれも悪くないと思った。それだけの事だ。
さあ、いい加減覚悟は決まったか?」
「そんな覚悟、決まる訳、ないだろ!?勝手に勘違いすんな!
俺は元々バトルのつもりで・・・っつーか、そんなモン、男同士でどうしろっつーんだよ!!」
この言葉。
男同士でどうしろと、というこの言葉が、カイの胸に突き刺さった。
ほとんど反射的に出たのだろう
しかしだからこそ、タカオの本音が表れているというものだ。
・・・・・決定的だ。
分かってはいたが・・・タカオには同性など、全くもって論外なのだ。
当たり前だ・・・普通に育った男が、男になど興味を持つはずも無い。
しかしここまで来てしまっては、もはや引き下がる訳にも行かない。
「男同士でどうするかは・・・すぐに分かる。
貴様のような馬鹿は、理論より体で覚えるしかない。」
タカオの顔は恐怖に引き攣った。
しかし・・・・。
未知なるものへの恐怖に怯えながらも
タカオはカイがとても無理をしている事に、とうに気付いていた。
表面はこんなに強気に、タカオを貶めようとしているように見えたが
何か・・・何かが確かに違うのだ。
相手を踏みつける時のカイは、もっと徹底的に、圧倒的な迫力がある。
しかし、今、こんなに傍にいるカイからは・・・
その言葉や態度からは、真逆のものしか、どうしてもタカオには感じられなかった。
何がお前をそんなに苦しめているんだ?
らしくねーよ!!
お前はいつだって自信に満ち溢れて・・・どんな強敵にだって向かっていく。
例え一度は負けても、次は必ず勝つために血の滲むような努力も惜しまない・・・・。
俺の知っているカイは・・・
俺が尊敬し、憧れて止まない、孤高の存在である、あのカッコいい火渡カイは・・・・
こんな無理やり誰かを抱くような・・・そんな男じゃない!!
しかし。カイは容赦なくその唇を下ろして行った。
あと、ほんの少しで二人の距離がゼロに・・・。
わかんねー。わかんねーよ、カイ!!
分かってる事は・・・
何も分からないまま、初めての・・いや、何度目だろうが!
気持ちの無いセックスなんて絶対にしたくない、という事。
カイの唇がタカオのそれに触れた。
それは何もかもが初めてのタカオにとっては衝撃だった。
カイの唇のその柔らかさ、甘い吐息。
もっと乱暴なものだと思ったのに、とても優しい・・・慈しみのようなものさえ感じて、タカオは戸惑った。
一瞬にして、キスに酔いそうになるのを
何とかして心を引き締めようと、もがいていたら
生暖かな柔らかいものが口内に侵入してきた。
カイの舌だ。
これがディープキス・・・と頭のどこかでタカオは思った。
カイの舌が自分の舌に絡み付いてくるのがわかる。
なんだか・・・甘くて気が遠くなりそうになる・・・・。
でも。
・・・・ガリ・・・ッ!!
「・・・!!」
カイの舌に思い切り噛み付いた。
それはタカオの精一杯の抵抗。
カイの口元からは一筋の血が流れ落ちている。
カイはそれを手の甲で拭った。
舌を噛まれたからといってカイは怯んだりしない。
むしろその逆。
火に油。
「ふふ・・・。上等・・・!」
タカオはカイの背後に黒朱雀が美しく舞うのを見た。
黒い炎の化身となったカイが、今、タカオに襲い掛かる。
どうしたらいい?
どうしたらカイを・・・取り戻す事が出来る?
カイ・・・・!!
end
「こどもでいこうぜ」
と書いてあった、何かののチラシがたまたま目に入りました。
「どこでもいいぜ」
と書いてあるかと思った・・・。
でも、ちょっと文字を入れ替えて
足したり引いたりするだけで、そうなりますよね??
・・・少々強引ですが・・・・。
それでつい、日記に書いてしまったものに大いに修正を加えたものが、この話です。
元々かなりの無理やり展開で、しかも中途半端・・それがかなり気になるものの
この先はまあ・・お決まりのエロなので・・・。
敢えて言えば裏の「夕焼けの色」のハッピーエンド編みたいなイメージです。
こんな話ですが、ハッピーエンドになることだけは頭にあります。
ですが、すいません・・・これ以上を書く気になれなかった・・・・。
その「夕焼けの色」とかなり似た感じになることは避けられそうもありませんし
ここまででさえ、既に似ているようにも思いますし。
・・・申し訳ございません。
ですが、気が向いたら書く事もあるかもしれない・・・・かも。
そんな状態ではありますが・・ここまで読んで下さり、心よりありがとうございました。
(2010.9.7)