「僕のお兄ちゃん」   一年○組 木ノ宮タカオ


僕のお兄ちゃんは考古学者です。
だから僕が小学校へ上がる前に、世界へ旅立ってしまいました。
遺跡の発掘調査をするんだそうです。
僕はお兄ちゃんが大好きだったので、たくさんたくさん泣きました。
「行っちゃいやだ〜!勝ち逃げするなんてずるい!!」と。
そうです。僕のお兄ちゃんはものすごくベイブレードが強かったのです。
僕はお兄ちゃんにベイブレードの楽しさを教えてもらいました。
そしてお兄ちゃんのお陰でどんどん強くなっていったのに
何度バトルをしても、どうしてもお兄ちゃんには勝てなかったのです。
だから大好きなお兄ちゃんを引き止めたくて
「勝ち逃げするなんてずるい!!」
と言ってしまったのです。
「勝つもん!絶対強くなって勝ってみせる!!」と。
僕は、お兄ちゃんはそれを聞いたら怒るかな、と思いました。
そして怒って僕と戦ってくれるんじゃないかと思ったのです。
でもお兄ちゃんはニッコリ笑って言いました。
「次に会う時には強くなったお前を見せてくれ!」
そうして手を振って行ってしまいました。
僕はお兄ちゃんを引き止めることが出来ませんでした。
でも、僕はお兄ちゃんとの約束を守る為に、毎日ベイブレードの特訓をしています。


僕のお兄ちゃんはベイが強いだけではありません。
なんと忍者なのです!
僕が幼稚園に入る前から、お兄ちゃんは忍者の通信教育を受けていました。
毎月、テキストと教材が届くのです。
いつもお兄ちゃんはそのテキストを一生懸命読んでいました。
そして怪しげな教材を裏山へ持って行って、練習するのです。
僕がこっそり覗きに行った時、もう少しで僕の頭に手裏剣が突き刺さる所でした。
お兄ちゃんが忍者の修行をしている時は決して近寄ってはいけないのだと、その時思いました。
そんなお兄ちゃんは努力の甲斐あってか
通信教育で忍者の勉強を最後まで終えて、忍者証明書をもらう事が出来ました。
お兄ちゃんは得意そうに、それを僕に見せびらかしていました。
それは今もお兄ちゃんの部屋に、額に入れて飾ってあります。
僕の兄ちゃんは忍者なんだ。
考古学者で忍者でベイも凄く強い、僕のお兄ちゃん。
お兄ちゃんはいつもいつも僕の自慢です。


お兄ちゃんと遊ぶ時はベイや忍者ごっこをするだけではありませんでした。
時々秘密の遊びもしました。
なぜ秘密なのか分かりませんが、ジッちゃんには秘密にしなければいけないそうです。
でも学校のみんなには秘密にしなきゃいけない、と言われてないので僕が作文に書いても大丈夫だと思います。
何をするかというと、お兄ちゃんが僕を裸んぼにして色んな所を触るのです。
ただ触って撫でたり舐めたりするだけなのに
とても気持ちいいので、僕はその遊びが大好きでした。
でもある日、その遊びをしていたら、お兄ちゃんもズボンを脱いで下だけ裸になって
僕のお尻の穴にお兄ちゃんのオ○ン○ンを突っ込もうとしてきて驚きました。
お兄ちゃんのオ○ン○ンは僕のと違って、大きくて太いのです。
僕は痛くて痛くて泣きました。
するとお兄ちゃんはいったん、オ○ン○ンは諦めて今度は指を突っ込んできました。
最初は痛かったけど、だんだん気持ちよくなってきました。
「指で慣れたから。」
と言って、もう一度お兄ちゃんはオ○ン○ンを突っ込もうとしてきたので僕は嫌がったんだけど
今度は案外簡単に入って、しかも全く痛くなくて逆に気持ちよくなっていたのです。
僕は凄くビックリしました。
それ以来、お兄ちゃんは時々僕のお尻の穴にオ○ン○ンを突っ込む遊びをするようになりました。
とても気持ちが良かったので、僕もその遊びが大好きです。
不思議なのは、その遊びが終わると、僕のお尻の穴の周りに白いネバネバした水みたいなものがいっぱい付くことです。
あれは一体なんなのだろう?どこから出たんだろう?
そう聞くと、お兄ちゃんは
「お前にもそのうち分かる日が来る。」とニッコリ笑うだけで、教えてはくれませんでした。
僕はもう小学校一年生になったけど、未だに分かりません。


考古学者なお兄ちゃん、ベイブレードがものすごく強いお兄ちゃん
忍者のお兄ちゃん、そして気持ちいい遊びをしてくれるお兄ちゃん。
どのお兄ちゃんも大好きで僕の自慢のお兄ちゃんです。
でもお兄ちゃんは、考古学者のお父さんと一緒に世界へ旅立ってしまいました。
以来、一度も帰ってこないのです。
僕はお兄ちゃんがいなくて寂しいです。
早く帰ってきて、仁兄ちゃん。
そしてまた色んな遊びをしよう!
僕はベイブレードがすごく強くなったよ。きっと兄ちゃんにも負けないよ。
忍者ごっこや気持ちいい遊びは一人じゃ出来ないので、お兄ちゃんが帰ってきて一緒に遊ぶのが楽しみです。
早く帰ってきて。
僕の大好きな大好きな仁兄ちゃん。









おわり


*****************************************



タカオが学校で作文を書いてから数日後。







「タカオ。」
懐かしい聞き覚えのある声。
まさか・・・と振り向くと、そこには兄の姿。

───これは夢?

タカオは呆然と見上げる。
「タカオ。兄ちゃんの顔、忘れちゃったのか?」
「・・・夢・・・じゃ、ない・・・?」
「夢じゃないと思うぞ?」
家を出たあの日から、ちっとも変らない・・いや、少し逞しくなった?
しかし懐かしい大好きな笑顔は、そして声は少しも変らない。
夢にまで見た、いつも思い出していた優しい兄の笑顔。
「兄・・ちゃん・・・?」
「大きくなったな、タカオ。」
こみ上げる熱いものを抑える事ができなくて。
「兄ちゃん・・・仁、兄ちゃん・・・・・。兄ちゃん!!」
タカオは兄に飛びつき、抱きついて泣いた。
「兄ちゃん、兄ちゃん!!会いた・・・かった・・!!兄ちゃん!!」
「なんだ、泣き虫な所はちっとも変ってないな。」
仁も可愛い弟を力強く抱き返す。
愛しい、大切な、たった一人の掛け替えのない弟。
「な、泣いてなんかないもん!!」
「じゃあ、これはなんだ?」
仁はタカオの涙を指ですくい、からかうように言った。
「・・・・汗!」
だが、タカオは頑として意地を張る。
そんな所もちっとも変っていない。
仁は懐かしさと愛おしさからタカオの頬に唇を落とした。
柔らかであたたかい、タカオのほっぺ。
「しょっぱい。涙の味かな。」
「だから汗!!」
「わかった、わかった。」
仁が笑う。タカオが笑う。
ようやく会えた、大好きな大好きな兄。




久しぶりに木ノ宮家の敷居をまたぎ、落ち着いた仁だが・・・。
「あ〜〜〜〜っ!!やっぱり家はいいな〜〜〜〜!!」
熱いお茶を飲んで畳に寝転がり、しみじみと言った。
「兄ちゃん、ちょうどよかった。明日ジッちゃん、なにか用事があるみたいで・・・。」
「なんだ?」
「あのさ、先生が僕のお家の人に話があるっていうんだ。」
「話?お前、なんか悪い事でもやったのか?」
「僕、悪い事なんてしてないよ!」
「・・・で、いつ?明日か?」
「うん。明日、授業が終わった頃、来て欲しいって。」
「そうか、わかった。」
それを聞いてタカオは心から嬉しそうに笑った。
兄が学校の用事で来てくれる事なんて、後にも先にもこれが最初で最後かもしれない。


そして翌日。
「すみません、木ノ宮タカオの家の者ですが・・・。」
職員室の扉を開けて仁が畏まって言うと、若い女の教師が立ち上がった。
「ま、まあ・・・てっきりお爺さんが来るものと・・・。」
「はい、祖父は今日、都合が悪くて。」
「じゃあ、もしかしてあなたが考古学者というタカオくんの・・・。」
「はい、タカオの兄です。」
仁はニッコリ笑った。
日焼けした肌にキラリと光る白い歯。
間違ってもオシャレとは言い難い出で立ちだったが
世界を渡り歩いてきた者の風格を漂わせている。
女教師は思わずドキッ・・としてしまい、必死に自らを落ち着かせた。
「じゃ、じゃあ・・あの・・こちらへ・・・。」
そして別室へと案内する。
会議室の一つだろうか、長机が並んでいた。
そのうちの一つに腰掛けるよう勧められて。
「あの、早速ですが・・・。」
と言って教師は数枚の原稿用紙を取り出した。
「これはタカオ君が書いた作文ですが・・・読んでもらえますか?」
「はい。」
仁はタカオの作文と聞いて、嬉しそうに読み始めた。

仁が旅立つ朝の事、そして忍者修行の事。
無意識に顔がほころんでしまう。
微笑ましい作文ではないか。一体何が問題なんだ?
と思いつつ先へ読み進むと・・・・。

・・・・・・仁の顔色が変った。
思わず女教師の顔をチラリ、と伺う。
教師の瞳はキラリ・・と光っていた。
「あ、あの・・・・・・。」
仁は何とか言い訳の言葉を必死に探すが。
世界中を渡り歩いてきたが、こんな修羅場は初めてかもしれない。

「ここで書かれている『お兄ちゃん』とは、あなたの事ですね?」
まるで尋問だ。
「・・え・・・まあ・・・その・・・・・。」
仁はにこやかに答えるものの、冷たい汗が背中を伝った。
「で、ここなんですけど・・・。」
と、女教師が作文のある場所を指差した時。
開き直った仁が思わぬ行動に出た。
「先生・・・。」
その女教師の滑らかな綺麗な手を、仁はその大きな手で覆ったのだ。
遺跡ばかり触ってきた、大きな無骨な手で。
「え!?」
まだ若いタカオの先生は、驚きと困惑で思わず頬を染める。
仁はその手を握りこんで教師を見つめた。
「あ、あの・・・・。」
今度は教師の方が言葉に詰まる。
「弟の先生がこんなに綺麗な方だったとは。」
「え?あの・・・。」
「僕はずっと遺跡ばかり相手にしてきましたから・・本当に今日は目の保養になりました。」
「あ、あのっ!」
「先生、ご結婚は?」
「え?いえ、まだ・・・。」
「付き合ってらっしゃる方は・・・。」
「いませんが・・・・あの、そんな事より・・!」
「そうですか。」
ニコ、と微笑む仁。
仁は元々整った顔立ちをしている。
忍者修行が趣味だったり、文明の利器の及ばない世界ばかり旅してきたので
アブナイ印象を、普通とはかけ離れた印象を持たれがちだが
仁はれっきとした、いわゆる美形であった。
そんな仁に手を握られながら見つめられて。
無骨だが逞しい手。
太い腕、そして厚い胸板。漂う風格。
「あ、あの・・・・。」
手を引っ込めようとするが仁は放さなかった。
戸惑いながら瞳を逸らす女教師。
頭がくらくらしてくる・・・。
「こ、困ります!」
必死に言葉を探す。
と、同時に仁は握る手の力を緩めた。
年若い教師は慌てて手を引っ込める。
しかし胸の高まりが収まらない・・。
そんな先生の姿にほくそ笑む仁。
「で、タカオの作文で何か?」
すっかり主導権を握ってしまった仁が言う。
「い、いえ・・・あの・・・・。」
教師は胸が高鳴ってしまって、とても言葉を発する状態にない。
「お話が以上でしたら、僕はこれで失礼します。これは頂いて行きますね。」
仁は席を立ち、タカオの作文を手に取った。
「安心しました。タカオの先生が良い方で。では。」

───ちょ、ちょっと待って・・・言わなきゃ!
      私は教師としてこんな事、許す訳には・・!!
      兄弟で、男同士で
      しかもタカオくんはあんなに幼いのに無理やり・・・大問題じゃないの!!
      ああ、でも・・・タカオくんと、このお兄さんが・・・?
     この人はあの時・・どんな顔をするのだろう?どんなに力強く?
     手を握られただけで、こんなに温かいのに・・・・・。
     タカオくんは、このお兄さんの・・・その時の顔を知っている・・・・・。

そして出口へ向かい、数歩歩いた所で仁が振り向いた。
「先生。」
ビクッ・・として慌てて返事をする。
「は、はい!」
タカオの先生は、ゴチャゴチャとあらぬ事を考えていた時
必死に葛藤している時に振り向かれ、混乱状態に陥ってしまった。
「先生。本当はこの作文の後半に書かれているコトが気になったんですよね?」
いきなり核心を突かれて更に慌ててしまって。
「い、いえ・・・あのっ!!」
そんな先生の姿を見て、仁がニヤリを笑んだ。
「そんなに気になるなら、今度いかがです?僕と・・・。」
振り向いた体勢のままの仁。
その妖艶な流し目が、まだ若い先生の胸に突き刺さる。
ボン・・ッ!!と女教師の頭に血が上る音が聞こえてきそうだ。
仁はクスッ・・と小さく笑うと
「じゃ、失礼します。」
そのまま片手を軽く上げて「バイバイ」のポーズのまま、会議室を後にした。
残されたのは、真っ赤な顔で椅子から滑り落ちてしまったタカオの先生。
完全に仁が去ってしまってから、教師はふぅ・・・・と長い溜息をついた。
「なんなの、一体・・・・・。あれがタカオ君の・・・・。」
思い出しただけでドキドキしてしまう。
己の手を握った、その温かさ、力強さを、つい思い出してしまい
女教師は思わずブルンブルン!と首を振った。




一方、仁。
学校からの帰り道。
「俺に抗議しようなんて100年早いよ、美人センセイ。出直して来るんだね。」
仁はふふ・・・っと笑みを浮かべた。
それにしてもタカオにはきちんと言っておかなければ。
今回は相手が初心で若い先生だったから良かったものの。
いくら仁が両刀使いだといっても、オジサンオバサン先生相手でも同じ手が使えるとは思えない。
まあ、取り合えず証拠は没収したし・・・。

───しかし、タカオがこんな作文を・・・。

仁は手の中の作文がとても愛おしいものに思えた。

───これは今度旅に出る時、お守りとして持っていこう。

そして久しぶりにタカオと「気持ちいい遊び」でもしようかと、内心ワクワクしながら家路についた。




















end

この話は、タカオの作文と後日談
それぞれを以前日記に書いたものをまとめたものです。
まず作文。
「忍たま乱太郎」を見ていたら、忍者の通信教育を受けている人が出てきて
「これ、仁兄ちゃんも受けていそうだな・・」と思ってしまってつい、書いてしまいました。
この作文を日記に上げたら、ありがたい事に色々コメントを頂き、
その中に、「後日親が呼び出されて仁が学校へ行ったら・・・」というコメントがあり
そこから妄想が爆発!そして後日談を書いてしまいました。
本当にアホな話をすいません・・・。
でも書いていてとても楽しかったですv。
それなりに年数が過ぎて、カイがこの作文を目にしたら・・・なんて妄想もつい・・・。
仁兄ちゃんの未来に幸あれ。
そして作文、一年生なのに色んな漢字を使っているとか、細かい所は突っ込まないで下さると助かります。
それでは本当に・・ここまで読んで下さり、ありがとうございました!!
(2009.4.17)


novel top