「朱雀〜〜〜〜〜!!」

無我夢中でタカオが朱雀を操る。

カイ・・・
帰ってこいよ。

帰って・・・・・。




美しく輝く聖獣は
カイを想う心の表れ。


カイ・・・・・・・・!






そして・・・・。










夜。
BBAに宛がわれたホテルの一室で
キョウジュがいつものようにパソコンに向かい昼間のバトルを分析していた。
カタカタとキーボードを叩く音が響く。

レイとマックスはパソコンの画面を覗き込み談笑しつつ、昼間のバトルを振り返っていた。
いつもならそんな場面の中心には必ずタカオがいて、
難しい話を振られてはチンプンカンプンで皆の笑いを買うのだが
タカオは彼等の会話に加わりもせずにベッドに寝転び、虚ろに天井を見上げていた。

カイ・・・・。







サクッ・・・・サクッ・・・・・・。
冷たい、ロシアの雪を踏みしめながらカイは一人、ホテルへと向かっていた。
足取りは心持か重い。


今更・・・奴らの元へ戻る資格が俺にはあるのか・・・・。

そんなことを考えながら。

ヴォルコフと爺に踊らされ
最強とは何かも分からなかった・・・。

気がつけばBBAチームのホテルは目の前。
少し前まで自分が泊まっていた部屋を見上げた。

暖かい明かりが灯る、その部屋。
あそこではヤツ等がいつものようにバカな話でもして笑っているのだろう。

あまりにも・・・・遠い・・・・・・・・・・。




裏切って。
救われて。

無様だ・・・・・・・・。


やはり、このまま・・・・・。

踵を返し、立ち去ろうとしたその時、アイツの声を聞いたような気がした。

カイ!



「カイ!お前を想って・・・泣いてるんだ〜〜!」
「お前を叩きのめしてやる〜!」
「今一人ぼっちのお前は、俺たちには勝てない!」
「早く!俺の手を掴め!」
「当たり前だ!仲間じゃないか!」
「仲間の危機を見過ごせるか!手を掴め〜〜〜!」





「な?一緒に帰ろうぜ?」




木ノ・・宮・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。













「カイ!!」
今、確かに聞こえた。カイの声。

タカオはベットから跳ね起きると、わき目も振らず部屋から飛び出していってしまった。



「タカオ?」
「どうしたんでしょう?」
「さあ?」


部屋から飛び出して廊下を走り抜け、階段を少し下りてタカオは立ち止まった。
タカオには確信があった。
根拠はないけれど・・・・それは直感。

暫くすると下から誰かが階段を昇ってくる音がして、タカオはじっと・・・待った。

コツ・・・コツ・・・・・。
コツ・・・・コツ・・・・・・・・コツ・・・。

昇って来たのは色素の薄い・・・青みがかった銀色の髪。
後の髪は濃い蒼。



「カイ・・・。」





エレベーターを使う気になれず階段をゆっくり昇っていたら、上から俺の名を呼ぶ声がした。
そこには目を輝かせて、嬉しそうな・・・でも今にも泣きそうなアイツの姿。

「木ノ・・・宮・・・・・・・・・。」


みるみる緩んでいく表情で2〜3段階段を駆け下りて来たと思うと、
まだ高さが結構あったにもかかわらず、ジャンプして飛びついてきた。

「カイ〜〜〜〜!!」

いきなりのその衝撃で後の壁にダンッ・・と激突して

「な・・・!無茶な事を・・・!」

だがタカオは
「カイ・・・カイ・・・・!!」

俺の胸に顔を押し付け、こすりつけるようにして。
手は腰に回してもう絶対に離さないと言わんばかりにしがみ付いて。
俺の名を呼ぶその声は次第に嗚咽に変わり・・・そして震えながら泣いていた。


俺はそんなコイツの姿に若干の戸惑いを覚えた。


俺の行動がこんなにも木ノ宮を苦しめていた・・・・らしい・・・・。

帰ってきて・・・・。
我を忘れたように泣いてすがる木ノ宮・・・。

こんな時・・・一体どうすればいいんだ・・・?


抱きしめてやるなんて・・・そんな考えが頭を掠める事すらなかった。
ましてや気の利いたセリフなど吐ける筈もなく。
涙を流して俺の帰りを喜んでくれる・・・ここまで待ち望んでくれた・・・・。
そんな経験は・・・・今まで・・・なかったんだ・・・・・・。


不器用にもだらりと腕を垂れて立ち尽くしている事しか・・・・・できなかった。



ただ、心から
「すまなかった・・・・。」

やっとそれだけ言うと

「・・・〜〜〜〜〜・・・!!」

木ノ宮は無言のまま、未だ俺の胸に顔を押し付けながら首を振った。
涙で言葉にできないようだ。
そんな事はもうどうでもいいと言わんばかりに必死に首を振って
涙ながらに言葉をひねり出す。

「帰って・・・・きたから・・・。
カイは帰ってきたから・・・・・もう、いい・・・・・。」

そして俺を見上げ涙に濡れた顔でニッコリ笑った。
笑った拍子にまた、タカオの瞳から涙が一粒零れ落ちた。


涙で潤んだ瞳は美しく澄んで輝いていた。
どこまでも深く蒼い・・・・。
まるで夏のバイカル湖のように。

その瞳はいつも・・・・・心からベイを楽しみ逆境でさえも覆してしまうような
暗闇の中の一条の光のような・・・強い信念を湛え
いつも俺をイラつかせ・・・・・・そして・・・・惹きつけた・・・・・・・。

そして・・・バイカル湖では強い決意を漲らせ、必死の願いを込めて・・・。

タカオの蒼い瞳。




瞬間。
俺の思考は停止した。

だらりと垂れていた腕は無意識にタカオへ伸び、そして気がついた時には



口付けていた。






「・・・・・!・・・・〜〜〜っ!!」









俺は・・今・・・・何をした・・・・・?








木ノ宮は驚いて何が起こったのかサッパリ分からない・・という顔をしている。




「・・・っ・・。」
とにかくなんとかしてこの場を取り繕うとした時。


「タカオ!こんな所に・・・・・・。・・・・カイ!!」

レイの声でハッと我に返った。

「ナニ?レイ、カイって・・・・・カイ!!帰ってきたネ〜!!」
「カイ・・・・お帰りなさい!」

「・・・・・・・。」
続々と現れるヤツ等に気をそがれ

「・・・・騒がせて、すまなかったな・・。」
とだけ言った。

「無事に帰ってきたんだ。もう、いいさ。」
「カイ、外は寒かったでショ?早くお風呂、入るネ。」
「とにかく部屋へ戻りましょう。」

俺はそのまま・・・
何事もなかったように目を伏せつつタカオの横をスッ・・・と通り抜け、部屋へと歩いていった。





「さ、タカオも行きますよ。」




キョウジュが声をかけるとタカオは
カイが帰ってきたというのに呆然としていた。
本来なら一番大喜びで大騒ぎしていそうなタカオが。

「タカオ?」

「あ?ああ・・・・。」

初めてキョウジュに気付いたかのようにビクッ・・・として返事をすると
唇に指を当てながら、ふらり・・キョウジュの前を通り抜け
ボーーー・・・・っと部屋へ帰っていった


「タカオ・・・・・・・。」


キョウジュはタカオの様子に怪訝そうな顔をし、ちょっと考え込んだが
気付けば誰もいなくなってしまったのに慌てて部屋へと走った。





そして。



「レイ。」
「なんだ?」
「実はドライガーの件でお話が・・・。少し長くなりそうなので今日はこちらの部屋に代わって貰えませんか?」
「わかった。じゃ、タカオかマック・・・・。」
「タカオ!すみませんが今日はレイと代わって貰えませんか?」
「え?」

有無を言わさず、タカオはカイの部屋へ放り込まれてしまった。

「・・・・え??」

部屋ではカイとタカオ、二人きり。

「え〜〜〜〜〜!!??」

奈落の底へ突き落とされたようなタカオ。

ちょっと待て!どうしろってんだ??
こんな状態の今、カイと二人きり??
おい!待ってくれよ〜〜〜〜!!
冗談じゃねーぞ〜〜〜!!!

タカオの心の叫びは誰にも届かなかった。



「風呂にでも入ってきたらどうだ?」
パニック状態のタカオにカイが何事もなかったように声をかける。

な・・・なんでだよ〜!お前があんなことするから俺・・・・。

返事をもできずに口をパクパクさせて、しどろもどろしていると

「入らんのなら俺が先に入らせてもらうぞ。」

とカイはあっさりバスルームへと消えてしまった。
タカオはとりあえずホッと胸を撫で下ろした。







「で、ドライガーの件で話ってなんだ?」
レイが能天気にキョウジュに尋ねた。

「え!あ・・・・ああ・・・・・・。すみません、アレは嘘です。」
「・・・・。どういうことだ?」
「すみません・・・・。今夜タカオはカイと話をさせたほうが良いと思ったので。
・・・・・・・・・・・・・・・。
さっきのタカオ。明らかに変でした。カイも。
特にタカオはあんなに心配していたのですから大喜びで飛び跳ねていそうなのに。」
「そ〜ゆ〜事ネ〜。」
「一番の問題は昼間解決済みですし、
何があったか知りませんが本人同士で話し合えばきっとなんとかなるでしょう。」
「・・・・・・・。かえっておかしな事にならなければいいが・・・・。」
「え?どういう事です?」
「どおって・・・・・・。なあ?」
「ん〜〜〜〜〜。まあ、いいんじゃないノ?日本じゃともかく世界では別に珍しい事じゃないシ。」
「え??なんなんですか??レイ!マックス!教えてくださいよ〜〜〜!!」










サアァァァァ・・・・・・・・。
カイは先程からシャワーヘッドから流れ落ちる湯に、身動きもせず打たれ続けている。


「・・・・・・・・。」

何故、俺は・・・・・・。


ずっと自問自答を繰り返していた。


わからない。
何も考えてなどいなかった。

アイツの・・・あの瞳を見たら・・・・自然に・・・体が動いた。

何故だ?






・・・・・・・・・。

それにしても。
先程のヤツは・・・。


先程のタカオの様子を思い出し、自然、フッ・・と笑みがこぼれた。
しかし笑っている場合ではない。



問い詰められたらどうする?




・・・・・・・知るか!

俺にも・・・分からないんだ・・・・・・・・・。







熱いシャワーが絶え間なく全身を叩きつける。

何もかも洗い流してしまえたら・・・・。














ここに・・・・カイの唇が触れたんだ・・・・。

タカオは無意識のうちにまた指で唇に触れていた。
カイの唇は・・しっとりとして暖かく柔らかかった。
思い出すだけでドキドキがよみがえり、茹でダコ状態になってしまう。
こんな経験は全く初めてだったが、不思議と嫌ではなかった。

なんでだろう・・・・・?


だが、タカオの頭は元々考え事をするようにできていない。


あ〜〜〜〜!!もう!訳わかんね〜〜〜!!


パニックを起こしそうになって、ベッドに盛大に寝転んで天井を見上げた。


・・・・・・。


とにかく・・・・カイが風呂から出てきたら、聞いてみよう。

・・・・・・・・・。
キ・・・・キスなんて初めてだったけど・・・・・・
その相手が男だった・・・なんて、普通に考えたら異常なんだけど・・・・。
自然と受け入れられた自分がいて。


なんでだろう・・?


堂々巡りだ。



とにかくカイに聞いてみる!
それからだ!!

・・・・・。
それにしても・・・・カイ、遅せーな〜。
アイツ、こんなに長風呂だったっけ?









カチャッ・・・・。

バスルームのドアが開く音がしてタカオは意気揚々と振り向いた。
が・・・・・。

「カ・・・・!!!!」

カイはラフなズボンに上半身裸という姿で現れた。

ボンッ・・!と顔から火を噴く音が聞こえそうな程、タカオは驚きうろたえた。

「こら〜〜!!服くらい着ろ〜〜〜〜!!」
タカオは目をそらして真っ赤になって叫んだ。

「?・・・変なヤツだな。」

いつもお風呂上りはカイだけでなくタカオも、また他のメンバーも似たような姿で出てくるというのに。
カイの裸(上半身)なんて見慣れているはずなのに、この時タカオは何故か直視できなかった。

心臓の音がカイに聞こえてしまうのではと思うほど・・・・
ドキドキと高鳴り、どんどん昂揚していくのを感じていた。

な・・・なんで俺・・・こんなにドキドキしてんだ?
裸なんていつも見てるのに・・・・。
頼む、・・・・お願いだから、気付かないでくれ・・・・!!

祈るような気持ちで、恐らくカイが何か身につけている、その衣擦れの音を聞いた。

「ホラ。これでいいか?」

振り向くと寝る時のいつもの姿になったカイがいて、タカオは心の底からホッとした。





おかしなヤツだ。
男の裸なんか見てうろたえるとは。構造は同じだというのに。
意を決して風呂から出てきたら、タカオのおかしな反応に気をそがれ・・・少し気が楽になった。

「あ・・・えっと・・・・・。」
「すまなかったな。」
とりあえず、問いただされる前にケリをつけようと俺は先手を打った。

「??」
「さっきのは・・・間違いだ。」
「間違い?」
「ああ。俺にもよく分からん。だからお前も忘れろ。」

今の所それが紛れもない真実だった。
本当に分からないのだ。だからこう言う以外になかった。

「忘れろって・・・・。」
「別にお前が覚えていたいのならそれでも構わん。好きにすればいい。」
「なんだよ、それ・・・!」

酷い言いようだと自分でも思った。
当然だが木ノ宮はムカッ・・・!としたようだ。

「いきなりキ・・・キス・・・なんてされたら誰だって悩むだろ?それを間違いだ、忘れろって・・・なんだよ!!」
「ならばお前が可愛くてつい・・・とでも言えば貴様は納得するのか!」

「そ・・・・そんな事言ってねーよ!」


・・・・・・。
何をやってるんだ・・・・・俺は・・・・。
まるでガキの八つ当たりだ。
別に俺はコイツをこんな事で追い詰めたかった訳じゃない・・・。
これでは木ノ宮が修道院へ忍び込んできた時の・・・ドランザーを捨てた時と大して変わらないではないか。

自らを落ち着かせるように溜息をつき、ベッドに腰かけ言葉を捻り出した。

「・・・・・・・・・・・・。すまない・・・・・・・・・。本当に、俺にも分からないんだ・・・・・・・・。」
「カイ・・・。」
「悩ませて・・・悪かったな・・・。」



カイは嘘がつけるようなヤツじゃない。

あの、高慢で高飛車でいつも自信満々のカイが、こんなに困っている・・・・。
・・・・本当に・・・・・分からないんだ・・・・・。

タカオはそんなカイの姿を見て、なんだかストンと・・・腑に落ちたように感じた。



「そっか・・・・。わかった。」

タカオの言葉を聞いて思わずハッ・・と顔を上げた。

「訳わかんねー事しちゃう時ってあるよなー。俺なんてしょっちゅうだぜ。」

俺は食い入るように見つめていたかもしれない。

「カイにも分かんねー事ってあるんだな〜。なんだか安心した。
・・・・・・・・・・。
・・・・俺のほうこそ悪かったな。大騒ぎしちゃって。」

タカオは一呼吸置いて少し頬を染め、照れくさそうに指で頬をポリポリ掻きながら

「・・・・・・・・。
さっきの・・・アレ・・・・びっくりしたけど・・・・別に・・・嫌じゃなかったし・・・・。もう、いいや。」
そしていつものようにへへっ・・・と笑った。

「木ノ・・・・。」

嫌じゃない。
その言葉を聞いた時のなんとも表現し難い・・・湧き上がるような・・・この感情はなんなのだろうか?



「そんな事より・・・・。おかえり。カイ!」
木ノ宮はもう一度、ニッコリ笑った。


「!!」

ドキッ・・・とした。
不覚にも・・・・・・・。

コイツの笑顔に胸が騒ぐ。もう、本当に訳がわからない。
一体どうしてしまったのだろうか?

俺は思わず目をそらした。

くそっ・・・!






その態度。
タカオも知り合ったばかりの頃ならその無愛想な態度にムカッ・・としたかもしれないが
今はそれがただの照れ隠しだという事がタカオには良く分かった。

「無愛想なヤツだな〜!「ただいま」くらい言えねーのかよ〜、全く。」

不満そうに文句を言っていたが

「でも!そっちがその気なら・・・・。」

ニヤニヤしながらタカオはベッドの上で身構えた。

「?」

そしてベッドのスプリングの反動を利用して隣のベッドに腰掛ける俺の所へ
先程の階段と同様に、ジャンプしてきた。

「わ!!何を・・・!!!」

そのまま俺に抱きついてベッドへと倒れこんでしまった。

「・・・・っ!!」
「カイ〜〜〜〜。本当に帰ってきたんだな〜〜。」

押し倒して覆いかぶさり、俺の胸に顔を押し付けてこのバカは・・・「この世の幸せ」という顔をしている。

「おい・・・!」
一応苦情を訴えてみた。

「・・・カイだ・・・・・。カイ・・・・・・・。」

タカオはフニャ〜〜〜ッと幸せそうに俺の胸に顔をこすり付けて気持ち良さそうにしていた。
まるで日向ぼっこをしている猫のようだ。
全く、コイツは子犬のようだったり猫になったりと忙しいヤツだ。

「心臓の音が聞こえる・・・・。カイ、ここにいるんだな〜・・・・。」


心の底から・・・・嬉しそうだった。


俺は・・・・・。
先程と同様、やはり戸惑いを覚えたが・・・・同時に安らぎも感じた。
タカオの温もりが、重みが心地よい。


ベッドの上で抱きつかれて。
こんな状態でこれからどうしろというんだ、全く・・・・・。

だが・・・。

こいつにしろ、他の連中にしろ・・・・。
俺の帰りがそんなにも嬉しいらしい・・・・。
・・・・これが、仲間・・・・・という事か・・・・・。



俺はどこか充足感を覚えていた。

「カイ・・・・・。俺、ムチャクチャ嬉しい。
もう・・・・勝手にどっか行ったりすんなよ?俺、カイがいねーと・・・・・・・・・・・・・。」

タカオはゆっくりと顔だけを上げ、俺の胸の上で必死な眼差しを向けた。



「・・お・・・俺はお前の母親じゃない・・・・。」

タカオの瞳に魅入っていた自分に気付き、慌てて言い返す。

「何言ってんだよ。あったりめーじゃん、そんなこと。
・・・・・でも、俺、カイが大好きだから。もう、絶対・・・・離したくないから・・・・。」

「・・・・ふん・・・まるで愛の告白だな・・・。」


ハッ・・・・!!



愛の・・・・・告白・・・・・・!?





驚愕の瞳がぶつかり合う。








いや、まさか・・・?
      
                             
ちょ・・・ちょっと待て!?



今まで気がつけば目で追っていたのも      
ムキになってコイツを倒す事に執着したのも
            
                             
カイがいなくなって俺、おかしくなっちまったのって・・・。
                             帰ってきてこんなに嬉しいのも・・・。



先程、無意識に・・・・・キスしてしまったのは・・・・。

                             
さっき嫌じゃなかったのって・・・。



嫌じゃないと言われて・・・妙に・・・嬉しかったのも・・・・・。

                             
カイの裸を見てあんなにドキドキしたのも・・・・。



ありえん!!

                             
嘘だろ?



馬鹿な・・・・。

                              
だって・・・・・・・。



      
男同士だぞ〜〜〜〜〜!!??










チラッ・・・・・とタカオを覗き見てみた。
すると・・・・目が合ってしまって慌てて互いに視線をそらす。

タカオは・・・とても可愛らしい顔立ちをしている事に改めて気付いた。
何故か・・・・キラキラ輝いて見える・・・・・。

ど・・・・どうしたらいいんだ!?

しかもタカオは未だに俺に覆いかぶさったまま。
このとんでもない状態にはじめて気付き、更に心拍数が跳ね上がる。


「あ・・・あの・・・・・・さ・・・・・・・・・・・。」

真っ赤な顔でタカオが切り出した。
冷静な時であったら、タカオも相当狼狽しているのが分かっただろうが
今はそれどころではなかった。

ドキン・・・ドキン・・・・・。
うるさいぞ!!心臓!!

「一つお願いがあるんだけど。」
「・・な・・・なんだ・・・・・。」

焦りを気付かれないよう答えたつもりだが自信はない。


「もう一回、アレ、し・・・・してみね〜?」
「・・・・・・。」



アレとは・・・・など、聞かなくても分かりきっている。





・・・・・。



俺はタカオの言葉に導かれるように・・・もう一度、タカオの後頭部に腕を回した。



そして・・・・・・・。




しっとりと・・・柔らかく暖かく・・・・。
甘くてとろけそうで。
体の中心がジン・・・・・・と痺れていくような・・・・・。









「ん・・・・・・・。」

可愛らしい声で甘い吐息を漏らし、トロン・・・・と虚ろな瞳で・・・俺の胸に倒れこんでくるタカオに。
湧き上がる衝動のまま・・・・抱きしめた。



強く・・・・・。





ようやく・・・・・・・・・・わかった・・・・・・・・。











だが、イタズラっぽくタカオが聞く。

「カイ・・・・・・、まだ・・・・分かんねー?」
「・・・・・・。お前はどうなんだ・・。」
「俺も・・・・・分かんねー・・・・・かも・・・・・・。」
「俺も、分からんな・・・。」



至近距離で顔を見合わせ・・・・クスクスと笑う。


「俺たち・・・・おかしいのかな?」
「・・・・・世間一般からは・・・はずれてしまったかもな。」
「ははは!やっぱりそうか〜!」

タカオが楽しそうに笑う。

「でも、いいや!俺、カイが好きだし!今、俺、すんげ〜〜〜幸せ!カイも・・・だよな?」
「どうだかな。」

タカオはぷーっと膨れっ面をした。

「この期に及んでまだ誤魔化す気かよ!」


くるくると変わる表情が可愛くて・・・・


愛しくて・・・・・・・・・・・。




もう一度タカオの後頭部に腕を回した。
















 


「・・・・・き・・・聞こえますか?」
「ちょっと・・待つネ・・・・今、いいトコ・・・ネ・・・・。」
「・・・・不器用だな・・・・じれったい。今度俺が直々に手ほどきを・・・・。」
「・・・・タカオ〜〜〜!早まっちゃダメですよ〜〜〜!」
「仕方ないネ〜。ボクなんて、ずーっと前からこうなる事は分かってたヨ!」
「気付いてなかったのはキョウジュくらいだな。」
「タカオ〜〜〜〜!!」

おいおいと。
泣き崩れるキョウジュの両腕を掴み、隣室への扉から引きずっていくレイとマックス。

「さ、寝るぞ。これ以上聞き耳を立てるのは無粋ってもんだ。」
「明日、どんな顔でボク達の前に現れるか、楽しみネ〜〜。」
「タカオ・・・・タカオ〜〜〜!!」





それぞれの思惑が駆け巡る中、
ロシアの夜は更けていく。






本当の戦いはこれから。



でも、今宵だけは・・・・・・・・・・・・・・・・。










end

novel top


今更の話ですみません。
バイカル湖妄想、今まで何度したかわかりません。だから書いてみたかった・・・!
過去、色んな妄想しましたよ〜v。
バイカル湖その後、両思いなのに初心すぎてそこまで至らない話、めでたくカップルになる話や、
カップル誕生だけに止まらず、初めてのvvvまでシちゃう話とか。楽しかった〜v。

さて、この話、途中タカカイか?という感じになってきて焦りましたが
何とか軌道修正できたみたいでホッとしております。

あやふやな終わり方をしましたが、この後、先へは進展していないと思われます。
だってこの話のカイ様、超うぶvv。だから不可能かと(笑)。
この先、「自分にもソンナvv感情があると知ったカイ様!元気になってしまった御自身と格闘!」
なんて話も面白いかもv。その場合タカオは今回同様、襲い受けでvv。フフフvv。

それでは、ここまで読んで下さりありがとうございました!
(2006.1.21)