「お〜い、塔矢〜!生きてるか〜?」
ヒカルは塔矢家の引き戸を無遠慮に、ガラガラ〜っと開けた。
そして勝手知ったるふうに、ドカドカと上がりこむ。
「・・・・・。進藤・・・。」
奥の部屋には布団で大人しく横になっている、塔矢アキラがいた。
「大丈夫か?顔、赤いぞ?」
「・・・・・なにしに来た・・・。」
「あ!ひっでーの!今日は一緒に花火見る約束だったろ?
でもお前、風邪ひいて熱出したっつーから・・・・。
塔矢先生もお母さんも中国行ったっきりで。
だからオレがわざわざ来てやったっつーのに!
ホラv。お泊り道具持参v。しっかり看病してやるからな?」
「・・・・・・・・。」
アキラは呆れ顔、というより怒り心頭?
「キミはどこまで・・・再来週には大事な本因坊リーグだぞ?
風邪がうつったらどうする!
ボクは本調子でないキミを倒しても、嬉しくない!」
「それはオレだって同じだぜ?風邪ひいた塔矢アキラを負かしてもな〜。
ほら!これ、じーじゃん秘伝の風邪薬。
すんげー不味いんだけど、よく効くんだよな、これが。」
ヒカルは台所から湯飲みを持ってきて、水筒から不気味な色をした液体をドボドボと注いだ。
「・・・・・・・・・。」
アキラはなんともいえない表情で、その液体を覗き込む。
「ホラ!」
ヒカルは邪気のない顔で笑った。
色といい、匂いといい・・・。
その液体と、ヒカルの顔を交互に見つめ
そして覚悟を決め・・・・ゴクゴクゴクゴクッ・・・・・!!
「すっげー!一気飲みだぜ・・・・。」
「キミが・・・ゴホゴホッ・・・飲めと・・・言うから・・・・!!」
「どんな味だった?」
「不味いと言ったのは・・・キミだろう。」
「でも効き目は間違いないぜ?後で粥、作ってやるからな?
その後と寝る前に飲んどけば、明日にはケロッとしてるよ!」
後2回もアレを飲まねばならないのか・・・とちょっとショックを受けているアキラがいた。
「そんなことより・・っと。」
塔矢行洋が中国リーグに参入してからというもの、ヒカルは塔矢家に入り浸っていたせいか
どこに何があるのか熟知していた。
暖かそうな綿入れ半纏を持ってきてアキラにかけてやる。
そして縁側へと誘った。
「寒いか?」
「・・・大丈夫だ。」
アキラは小さく笑んだ。
そんなアキラをついつい、ジー・・・・・ッと見てしまうヒカル。
「お前ってさー。和装、スッゲー似合うな。」
「そうかな。」
と言っている傍から

ヒュ〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・・。

「お!来たぞ!」

ドドーーーーーーン!!

一発目の見事な花火が打ち上げられた。
「でっか〜〜〜〜!!綺麗だな〜〜!!お前ん家、最高のポジション!」
二発目、三発目。
次々に打ち上げられる見事な花火が、夏の夜空を彩った。
大喜びのヒカルの横顔を見つめながらアキラは
幸せとは、きっと・・・こういうものなんだろうと・・・・・思った。

「なあ、塔矢。囲碁って夜空に似てないか?」
「夜空?」
「夜空っていうより・・・宇宙!
碁盤の上に星を並べて・・・・・壮大な宇宙を作るんだ。」
突拍子もない事を言い出すヒカルに、驚いたアキラだったが
表現こそ違え、それは常日頃から自分も感じていたことだ。
他の誰でもない、ヒカルが同じように感じていたこと、それが何よりも嬉しかった。
「・・・・・・・。
そしてキミと一番美しい宇宙を作るのは・・・・いつだってボクでありたい。」
アキラは静かにヒカルを見つめていた。
その、あまりにも真摯な瞳に、一瞬ヒカルは時を忘れた。
そして慌てて取り繕うように言う。
「・・・ったりめーだろ?取り合えず、今度の本因坊戦だな?」
「ああ。」
そして、とても自然に、唇を重ねあった。




そして夜。もう寝ようという、この時間。

既に花火を見ている頃から熱も下がりだし、あの薬も2杯飲んだ。
アキラ本人としては、すっかり調子を取り戻していた。
さすがヒカルのじーちゃん秘伝の薬のお陰といった所か。

「ちょ、とーや!さすがに今夜はよした方がいいって!」
「何故だ?」
「お前、完全に病み上がり!そーゆー時、無理するのが一番いけないって言われなかったか?」
「大丈夫だ。無理はしない。」
「無理しないって・・・お前・・・・。うわあァ・・・・!」
「すぐ終わらせる。問題はない。」
「あ・・もっ・・・!ってお前まさか自分だけ○ク気じゃ・・・・!」
「心配か?大丈夫だ。ボクはキミのイイ所は知り尽くしている。
だから言っただろう、すぐに終わらせると。」
「・・・あッ・・・も・・・ッ・・・・!!とー・・・・・やぁ・・・〜〜〜〜!!」



翌日。ヒカルに風邪はしっかりうつってしまったが
じーちゃん秘伝の風邪薬とアキラの献身的(?)な看病ですぐに完治したとか
また二人そろってぶり返したとか。








end


ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
(2007.8.20)
other top