砂糖菓子のような甘いクリスマス 


 今年のクリスマスは、久しぶりに帰ってきた仁兄ちゃんと家で過ごしていた。居間でごちそうやケーキを食べ、今は二人でテレビを見ながら寛いでいた。
「今年のクリスマスは、此処で過ごそうと多くのカップルが来ています!」
 テレビでは、茶色の厚いコートを着た若い女性レポーターが実況していた。彼女がいる場所は、最近カップルの間で人気のスポットで、テレビにさりげなく映っている多くのカップルが肩を並べていた。
 その映像を俺と兄ちゃんは、黙って見ていた。そんな時……。
「タカオは、彼氏とか居ないのか?」
 沈黙を破って兄ちゃんは、俺に尋ねた。
「今は居ないよ……」
 いきなりの質問で、俺はとっさにそう答えた。だけど、本当は好きな人が居た。その人は目の前にいる人物だ。
 俺は昔から兄ちゃんのことが好きだった。兄ちゃんは何をやっても完璧で、そんな姿を見て育った俺は常に憧れていた。そして、それがいつの間にか愛情へと変わり、兄ちゃんへの視線や思いも変貌していった。しかし、俺の思いも知らずに兄ちゃんは俺の前から消えて、帰ってきたと思えばまた何処かへ消える、ということを続けた。
 その度に、俺の中にある愛という炎が自分でもどうすればいいのか、わからないまま激しく燃え上がった。
「なぁ、兄ちゃん。久しぶりに展望台に行かない?」
 俺は笑顔で兄ちゃんを誘った。さすがに、もうこの感情を抑えることが出来ないでいた。だから、誰もいない展望台で全てを話して楽になろうと決心をした。
「そうだな……。行ってみるか」
 そして、俺達は家を出て近所にある展望台に向かった。


 展望台に着くと、そこは誰もいなかった。ここも前までは、夕方近くになるとカップルが多く来ていたが、今ではテレビでやっていたスポットが人気となり、すっかり忘れ去られている。
そんな中、兄ちゃんは手すりに掴まり展望台の下に広がる街の風景を眺めた。一方の俺は、兄ちゃんの背後にあるベンチに腰を下ろした。
 いざ、言おうと思うと、なかなか言えない。だけど、せっかく此処まで来たのだから言ってしまおう。
「兄ちゃん……」
 俺は、背後から兄ちゃんを包み込むように抱きついた。兄ちゃんの背中はとても温かかった。
「どうした、タカオ」
 兄ちゃんは、平然な表情を俺に向ながら尋ねた。そんな表情をされて、少しドキっとした
「俺、本当は好きな人が居たんだ。でも、その相手が兄ちゃんだったから、ずっと言えなかった……」
 突然、告白を聞いて、兄ちゃんの表情は次第に驚きへ変わった。これで、兄ちゃんに嫌われた。俺はそう思った。だって、妹が実の兄に告白するなんて異常だからだ。嫌われてもおかしくない。
「俺もタカオのことが好きだ、昔から」
 兄ちゃんは、真剣な顔つきで俺に言った。言われた俺は、非情に驚いた。だって、今日までずっと片思いだと思ったから。
 でも、兄ちゃんも妹の俺を好きだと言ってくれて、俺は嬉しくて涙が出そうになった。
「兄ちゃん、もう何処にも行かないで」
「ああ、俺はどんなことがあってもタカオのこと守り続けるよ」
 俺と兄ちゃんは、誓いをたてるかのように口づけをした。まるで、それは砂糖菓子のように甘かった。
そして、俺達の事を見守るようにダイヤのような輝きのある小雪が降ってきた……。


END





双葉様、ありがとうございました!
仁タカも大好きなので嬉しかったですv。
仁の大人の余裕が素敵でした。
タカオも可愛い〜v。
兄妹でありながら滅多に会えない、それ故募っていく気持ちが切なかったです。
砂糖菓子のようなはじめてのキスも。
仁は本当に罪なヤツですよね〜。
それでは素敵な小説をありがとうございました!





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