ガツッ・・・ドカッ・・・・ベキッ・・・・!!
「・・・・ッ。」
草木も眠る丑三つ時。
キーンは一人、ベッドから体を起こした。
不機嫌そうに頭を掻きながら隣に眠る愛しい人を見下ろす。
頭にパンチを一つ、お腹を蹴り上げられ、そして顔に腕が振り下ろされて。
「・・ったく、なんて寝相だ・・・。」
見ると、いとも幸せそうに高いびきな吾郎。
キーンは一人、溜息をついた。
こんな幸せそうな顔をされたら、理不尽に殴られた怒りも吹き飛んでしまう。

──仕方ないな。俺は故障者だし明日、試合に出る訳でもない。
   だが、俺も眠れないのは辛い。

「・・・・。」
キーンは吾郎の頬に唇を落とし
そしてうなじの辺りを執拗に吸い上げて、その出来栄えに満足げに微笑むと
こっそりソファーへ移動した。

翌朝。
ふぁ〜〜〜〜〜!!と大きくあくびをしながら伸びをして
キーンが隣にいない事に気付いた吾郎。
「・・・なんでお前、そんな所で寝てんだ?」
「・・・・・。さあな。」
やっぱり何も覚えていないらしい吾郎に苦笑するしかないキーン。
「お前、怪我してんだからさ、無意味に動くなよ。」
一応心配しているらしい。
「意味も無く移動した訳じゃないが・・・。まあいい。着替えろ、茂野。朝食に行くぞ。」
「あ、そーだそーだ!腹減った〜!」
大急ぎで着替えて顔を洗い、キーンの着替えを手伝おうとするが断られ
「ちぇ!なんだよ、せっかく人が親切に・・。」とブツブツ言う吾郎。
その吾郎の様子を垣間見て
例のものに気付いていない事を再確認し、なんとなく楽しげなキーン。
「?何か良い事でもあったのか?」
「・・・何も無い。」
「・・・にしては機嫌良さそうだな。」
「・・・・。別に。ただ、昨夜のお前を思い出しただけだ。」
昨夜の吾郎。
騎乗位でキーンの上で、ひたすら腰を振り・・・・。
「・・・・そんなモン思い出すな〜〜っ!!」
吾郎は真っ赤な顔で怒鳴る。
「ふふ・・。行くぞ。」
「・・・・・・ったく、このスケベヤロ〜・・・。」
吾郎はブツブツ文句を言いつつ高揚した頬が収まらぬまま、キーンの後に続いた。
そして二人仲良く朝食バイキングの間へ。
ホーネッツの中では既に公然の秘密となっているキーンと吾郎。
その二人が仲良く現れて
つい話題の二人を伺い見てしまった他のメンバーが
あまりに目立つ吾郎のうなじの印を見て仰天したとか頭を抱えたとか。
事の成り行きを静観していたキーンは、一人密かにほくそ笑んでいたとか。
全くそれに気付いていない吾郎がかえって哀れに思えて
後でこっそりとロイが耳打ちしたとか。

「いや〜、あの時の茂野の顔ったら!思い出しただけで笑えるぜ!カカカカカカッ・・・!」
「あ?誰の顔だって?」
「だから茂・・・・ゲ!茂野!!」
「ふふふふふふ・・・・!」
「はははははは・・・・!!」
ロイと吾郎、二人不気味に笑いあう姿が目撃されたとか。





そしてその後。散歩先で・・。



「あれ?Jr.じゃないか!」
「茂野・・久しぶりだな。」
「まあな。お前、スランプとかで大変だったらしいな。」
「お前もな。」
そして二人、笑いあった。
その時、会うことは無かったとはいえ
ある偉大な人物に目を開かせてもらった事に思いを馳せて。
「あ、そうそう。こいつ、チームメイトのキーンだ。まあ、顔くらいは知ってるよな!」
「・・・当たり前だ。お前じゃあるまいし。はじめまして、Mr.キーン。」
二人にこやかに握手を交わした。
そしてJr.はふと振り返って吾郎を見ると、そのうなじにはあまりにも目立つ印が・・。
「茂野、これはなんだ!」
「?これってなんだ?」
「とぼけるな!こんなに目立つ所に・・・・!」
そしてハッとなるJr.。
こんなに目立つのに、共に歩いていたキーンが気付いていないはずは無い。
本人にとっては死角だが、キーンにとっては。
「・・・・これはお前か。」
Jr.の社交的な笑みが消えた。
「なんのことだ。」
受けて立つと言わんばかりの強気な表情のキーン。
「・・・・・。」
Jr.の瞳は怒りに震えていた。今にもキーンの胸倉をつかみかかりそうな、その形相。
そして何が起こっているのかサッパリ分かっていない吾郎。
「どうしたんだ?なんか険悪になってないか?」
「茂野、お前・・・。」
何か言いたげなJr.の強く光る青い瞳。
「?」
真実、何が起こっているのか分からない吾郎の瞳。
「・・・チッ・・。まあ、いい。おい、お前!」
「・・・・。」
「いい気になるなよ?油断したら最後だ。覚えておけ。」
「ふふっ・・。俺はそんなヘマはしない。」
そしてそのまま振り向きもせず、Jr.は立ち去ってしまった。
「・・・Jr.のヤツ、なんで突然怒り出したんだ?お前の得意技の毒舌が出た訳でもねーのに。」
「さあな。そんな事より・・明日は気を抜くなよ?今のあいつはなかなか手強い。」
「わかってるって、そんな事は!あいつとの付き合いはお前より長いんだからよ!」
一瞬、キーンの瞳の色が変った。
「?どうしたんだ?」
吾郎に訊ねられてフッ・・と微笑むキーン。
「いや、なんでもない。行こう。」

───出会ったのが早かろうが遅かろうがそんな事は問題じゃない。
    Jr.は今頃さぞかし後悔している事だろう。
    だが、しかし・・・・。
    これほど天然で自分の振りまく魅力に全く気付いていないヤツも珍しい。
    他のヤツに負けない自信はあるが、これからもこういった事が絶えそうもない・・・か・・・・・。
  
キーンは楽しそうに自分に語りかける吾郎の無邪気な笑顔を見て、心の中で溜息をついた。











end

Jr,を負け犬にしてしまってすいません。Jr.、大好きです。ジュニゴロも好きです!念のため!!
本当は、このままJr.を含めた3Pに持って行きたかったんだけど・・・(汗)。
まあ、それはまたの機会にでも。

ここまで読んで下さりありがとうございました!
(2008.12.12)



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