「留学生のジェフ・キーン君だ。仲良くするように。」
は〜い!と男子生徒の面倒臭そうな声と女生徒の黄色い声。

「お前、アメリカじゃ野球やってたんだって?」
「まあな。」
「じゃ、決まりだな。」
「何がだ。」
「何って野球部入部に決まってんだろ!?」
「・・・・。俺はままごと野球になど興味はない。」
「ままごと?・・・へっ!面白れー!寝言は俺の球を見てから言うんだな。」
やる気満々の吾郎に溜息のキーン。

そして放課後のマウンド。
「まさかお前、キャッチャーだったとはな。ま、おあつらえ向きだぜ。
油断だけはするなよ?怪我されたら面倒だからな!」
「・・・・能書きはいいから、早く来い。」
「・・・・。・・ったく可愛げのねーヤツ!じゃ、行くぜ?」
グラブのボールを握り、腕と高く上げ、足を曲げて引き寄せる。
そして一気に左腕を、伸ばす─────。
唸りを上げてキーンのミットへ一直線に。
・・・・!!
凄まじい手ごたえ。
キーンは目を見開いた。
だが。
「お前、変化球は何が使える?」
「ノーノー!ディス イズ オンリー、アイラブ ファストボール !」
自慢げに英語を使ってみるが
「・・・・馬鹿の一つ覚えか。」
「なんだと〜〜!?」
「だが、これほどの球が放れるヤツはアメリカにもいなかった。」
キーンがニヤリと笑む。
それを見てへへっ・・と笑う吾郎。
「まあいい。真っ直ぐしかないヤツでも俺の言う通りに投げれば何とかしてやる。」
「・・・・お前、友達、いねーだろ・・・。」

翌日から。
キーンと吾郎、一見不釣合いなコンビが学園内でよく見られるようになった。
吾郎が乱暴にキーンの肩に手を回し、楽しそうに野球の事ばかり話すのに対し
キーンはその鉄面皮を崩さす、相槌さえも打たない。
仲が良いのか悪いのか、見ている側にはサッパリわからない。

そんなある日の朝。
「あ、キーン!!おはよ〜〜〜〜!!」
遠くからキーンを見つけた吾郎は、そう叫びながら嬉しそうに駆け寄った。
「・・・・・・。」
そしてキーンの目の前に到着。
「・・・・。お前さー。人が挨拶してんだから、「グッド モーニング」くらい言えっつーの!」
すると無言のままキーンの腕が吾郎に伸びた。
そのまま後頭部に手を回し、引き寄せて・・・・。
「・・ん・・んっ・・・・ふ・・・・・ぁっ・・・・!!」
突然の事にろくな抵抗もできない吾郎、苦しそうにもがくがキーンは容赦しなかった。
たっぷりと吾郎の口内を堪能すると、ようやく吾郎を開放した。
「な、なに・・すんだよっ!!」
やっと酸素を取り入れる事ができ
荒く息を整えながら真っ赤な顔で抗議する吾郎。
「アメリカではこれが挨拶だ。」
だがキーンは表情も崩さず堂々と、こう言ってのけた。
「挨拶って・・・ディープキスがかよっ!!」
吾郎の顔は茹蛸状態。その瞳には涙が滲んでいた。
こんな顔で抗議されても全く説得力がない。
「何をしている。早くしないと授業が始まる。」
「何って・・・・てめ〜のせいだろーがっ!!」
スタスタと教室へ向かうキーン、追いかける吾郎。
これらの光景をしっかり見ていた他の生徒達。

楽しい学園生活が今日も始まる。












end

「愛してるんだけどバトン」というものより。
お遊びです。楽しかった〜!
ここまで読んで下さりありがとうございました!
(2008.10.26)



MAJOR top