むかしむかし、あるところに粉屋が3人の子供達と住んでいました。
ところがある日のこと、粉屋の主が死んでしまいました。

「おとさん!!死なないで〜〜〜〜〜!!!!」
末っ子の吾郎は大泣きをして悲しみました。

一番上の息子、沢村には粉を引く風車を、
「はっはっはっはっは・・・!悪いなー、本田〜。粉引きの仕事は俺がもらったぜ!」

二番目の娘、薫にはロバを、
「ほほほほほほ・・・・!ロバがいれば仕事は楽々〜〜〜vv。これも人徳ねーvv。」

三番目の息子、吾郎には「小森」という名前の猫を遺産にもらいました。


吾郎はがっかりして呟きました。
「俺にはこんな猫一匹・・・・。
これからどうやって生きていけばいいんだよっ!!」

すると猫の小森が言いました。
「元気出すんだ、本田君!!僕がきっと何とかするから!!」

「おわああああああ〜〜〜〜!!
ね・・・猫がしゃべった〜〜〜〜〜!!!!」
吾郎は驚いて叫びました。

「今まで黙っててゴメン。僕、喋れるんだ。
それより本田君、僕に考えがあるんだ。
僕に赤い皮の長靴と本田君の写真、そして本田君のパンツを用意してくれないかな?」
「は??ンなもん、どうすんだよ?」
「いいから早く!」
「う・・・わかったよ。」

小森は吾郎が用意した長靴を履いて
そしてリトルリーグのユニフォーム姿の吾郎の写真、穿き古した吾郎のパンツを持ってお城へと向かいました。

「あんなもん、どうする気だよ・・・・。」






暫くすると小森は沢山の褒美を持って吾郎の所へと帰ってきました。

「・・・・どうしたんだよ?これ??」

吾郎は驚きを隠せません。
それはそうでしょう。小森に渡したのは吾郎の写真とパンツ。
それが何故こんな金銀財宝に化けるなどと?

「ふふふ・・。まだまだだよ。僕の計画はこんなモノじゃないんだ。」



翌日、小森はまた言いました。
「本田君、今日も頼みたいんだけど、いい?」
「・・・なんだよ。」
「今日は・・・僕が写真を撮るから本田君は僕が言う通りのポーズをとって欲しいんだ。」

「で、どんなのだよ。」
「下着姿で靴下を履いているポーズ!」
「はい??」
「本田君、早く!」

吾郎は何がなんだか分からないままに服を脱ぎ下着姿となって、今脱いだばかりの靴下を履くポーズをとりました。

「そうそう!いい感じ!本田君、カッコイイよ!」

上から、下から、角度を変えてシャッターを切る小森、ノリノリです。

「そ・・・そうか?」

褒められて悪い気はしない吾郎でした。

「それから・・・その靴下!それを僕にくれない?」
「え?これか?・・・・臭いぞ?」
「だからイイんだよ!!」

いつにない小森の迫力にすっかり押されてしまった吾郎は靴下を差し出しました。





帰って来た小森はまた沢山の金銀財宝を持ち帰りました。

「なんであんなモンが宝に化けるんだ??」

何を聞いても小森はニコニコ笑うだけで教えようとはしません。

「大丈夫。計画は順調に進んでいるから。明日もよろしくね?」




さらに翌日。

「そろそろ仕上げに入るよ。今日は本田君にお風呂に入ってもらいたいんだ。」
「風呂〜〜〜〜〜!?」
「そう、お風呂vv。」

小森はニッコリ笑って言いました。
最近すっかり小森には逆らえない感じの吾郎は、渋々ながら服を脱ぎ捨てお風呂へ入りました。

チャ・・ッポン・・!

「カ──────ッ!!気持ちいい・・・・・!!」
「カシャッ・・!うん!その表情、無邪気でイイよ!」
「お・・お前、何やってンだよ!?」
「当然でしょ?この仕上げにかかってるんだから。」
「お前、一体・・・?」
「いいからいいからvv。うーん、本田君、言いにくいんだけどソレ、もっとさり気なく隠してくれない?」
「わぁ〜〜〜〜〜〜・・・・・ッ!?」

吾郎は慌てて前を隠しました。

「何恥ずかしがってんの?猫相手に。
それよりも・・・もっとこう自然に・・・見えそうで見えない・・・そう、チラリズムを、だね・・・。」
「お前・・・ヘンだぞ・・・?」
「いいから・・・右足もうちょっと上げて・・。そう、そんな感じ!
しかもその少し照れた表情!本田君、役者だな〜〜!!」

カシャ、カシャ、カシャ、カシャ・・・・・・。

そして小森は、そのデジカメのデータを持ってまたお城へと行ってしまいました。
勿論帰って来たときは大量の金銀財宝を持って。



「・・・・わかんねー。俺にはどーーーしても!わかんねーーー!
オイ小森!お前、一体何やってんだ??」

「いよいよだよ、本田君!!
今日こそ本田君の運命が決まる日だよ!覚悟はいい!?」
「覚悟って・・・何の覚悟だよ。」
「本田君。今日は本田君にとっても僕にとっても運命の日なんだ。
でも大丈夫!万事抜かりはないよ!本田君は何も考えず僕の言う通りにしてくれる?」

「・・・・・今度は何させる気だよ。もう、大抵の事には驚かねーぞ?」
「簡単な事だよ。本田君はただ池で泳いでくれればいいんだ。
ただし・・・・。」

小森の小さな目が光りました。

「絶対に抵抗しない事。いいね?」
「お、おう・・・・!」







「さあ、本田君、服を全部脱いで!飛び込むんだ!!」
「ぜ・・・全部かよ!?」
「当然だよ!今日は絶対に失敗できないんだからね!?さあ、早く!!」

吾郎はまた渋々ながらに服を脱ぎ、目の前の池に飛び込みました。

ドッボーーーーーーン!!


小森は吾郎が飛び込んだのを確認すると、吾郎が着ていた服を巨木の陰に隠してしまいました。
すると間もなく立派な馬車がやって来ました。

ガラガラガラガラ・・・・・・。



「本田君・・・いくよ。」
「・・・??」

吾郎の返事も聞かずに小森が叫びました。

「大変だ〜!助けてくれ〜〜〜〜!!
本田君が・・・本田君が、強盗に〜〜〜〜〜〜!!!!」

すぐさまピタッ・・・!と止まる馬車。
中からは王子様が血相を変えて飛び降りてきました。

「吾郎くんっ!!大丈夫!?」
「・・・・・????」
「吾郎くん・・・よかった・・・。怪我はないようだね。さあ、僕が体を拭いてあげよう!」

どこから取り出したのか、大きなバスタオルでくるむように王子は吾郎の体を拭き始めました。
王子の手つきが何やらアヤシイ感じがしましたが、気のせいでしょうか?

「お・・・お前、誰だよ!?」
「僕?僕はこの国の王子、佐藤寿也。吾郎くん、服は?」

それには小森が答えました。

「先程池の傍を通りかかった際、何者かに襲われて身包み剥がれて池に放り投げられてしまったのです。」
「なんだって!?吾郎くん!貞操は無事!?」
「て・・・貞操・・・・って・・・・。」

寿也は吾郎を四つん這いにさせて確認しました。

「よかった・・・・・。」
「オイ!お前・・・!ドコ見てんだよ!!なんて格好させんだよっ!!」

王子は吾郎の言葉には答えずに

「服はすぐに僕が用意しよう。」



大急ぎで召使が持ってきた服を手に取った王子は
「僕が着せてあげるよvv。」
とニッコリ微笑みました。

その笑みに、ゾゾゾゾゾゾーーーーーーッと全身に悪寒が走った吾郎でしたが
小森に「抵抗しないでねv」とキツクいわれていた事もあり、耐えることにしました。

そして。

「うん、吾郎くん!良く似合うよ!!想像していた通りだ!!」
「な・・・・ナンなんだよ!これは〜〜〜〜〜!!!!」

吾郎が着せられたのは純白のウエディングドレスでした。

「さあ、行こう!すぐに式を挙げるんだ!」
「ちょっと待った!
さっきからお前は訳のわかんねー事を・・・・。
ナンなんだよ、この服は!式って何のことだよ!?」

「・・・・。何を今更。小森君に聞いてないの?」
吾郎は小森の方へと振り向きましたが小森はただニコニコ笑うだけで答えようとはしません。

「初めて小森君に吾郎くんの写真を見せてもらった時、天使かと思ったよ。あまりの可愛さにね。
あの時もらったパンツは・・・・。」

王子は王冠を取って見せました。すると・・・。

「ほら。こうやっていつも被っているんだ。」
「げ・・・・。」
吾郎はたじろぎました。

「次に貰った、靴下を履いている写真も君のキュートさが凝縮されたような、無邪気で無防備な姿が可愛らしくて・・・。
ちなみにその時貰った靴下は・・・・」

王子は爽やかな笑顔のまま、立派な上着の胸元を緩めました。

「こうしていつも首に巻いているんだ。
僕の体温で暖められた君の靴下から君の香りが立ち昇って・・・。」

王子はウットリとした表情で語り続けます。

「・・・・変・・態・・・・だ・・・・・。」
吾郎は後ずさりを始めました。

「最後に貰ったお風呂での写真。
これは特大サイズに引き伸ばして僕の部屋中に飾ってある。
勿論、肌身離さず持ち歩き用にも幾つか抜粋して・・・・ホラvv。」

王子は上着の内ポケットから小さな写真集を取り出して見せました。
中には吾郎の恥ずかしいポーズの山が・・・見えそうで見えないチラリズムの真髄が凝縮されておりました。

「・・逃げよう・・・こんな変質者に構ってられるかよッ!!」
「どうしたんだい?吾郎くん。」

今にも逃げ出さんばかりだった吾郎は小森と王子の従僕に取り押さえられ、ジタバタと悪あがき。


「さあ、城へ帰ろう!盛大な結婚式を執り行わなくっちゃね。」

王子は可愛らしいウエディングドレスを身に纏った吾郎を姫抱きにしてニッコリ笑うと
嫌がる吾郎に構わず口付けました。

「ん・・のゎ・・・ッ!!」

最初はバタバタと断末魔の抵抗を試みていましたが
いつしか吾郎は王子のテクニックに酔いしれ最後には完全に陥落してしまうのでした。
名残惜しげに唇が離された頃にはポワン・・・と意識も虚ろな骨抜き状態になっていました。

「ちょっと早いけど誓いのキスv。続きは今夜・・・じっくりと・・・ねvv。」

王子の妖しげな視線に射すくめられ、吾郎は身動きできなくなってしまいました。

な・・・なんだ・・・この感じは!?やけにドキドキしやがる・・。
王子が・・・キラキラ輝いて見える・・・。目が・・離せねー・・・!!



そんな様子を傍から全て見ていた小森は心の中で吾郎に語りかけました。

本田君、それはね・・・・。「恋」って言うんだよ?





城に戻ると盛大な結婚式。

諸侯の祝福を受け、満足げに微笑む王子と真っ赤な顔で王子を睨みつける吾郎。

「吾郎くん、君に出会えてよかった。愛している・・・。」
「お・・・!俺はお前なんか・・・・!!」
「お前なんか?」

王子は微笑を湛えながら吾郎の顔を覗き込みます。
すると、ただでさえ赤く染まっていた吾郎の顔はみるみるユデダコ状態に。

「・・・・・え・・・っと・・・・・。」
そんな顔で瞳をあちこちに泳がせる姿はかなり可愛らしい。

「ふふふ・・・。吾郎くん、わかってる?
そういう態度。君を好きな男にとっては誘ってるようにしか映らないんだよ?」
「だ・・・誰が誘って・・・・・なん・・・か・・・・ん───ッ!!」

王子は吾郎の言葉ごと、唇を奪い去ってしまいました。



一緒に生きていこう?
これからは、ずーっと一緒に・・・・・。









盛大な結婚式から間もなく、寿也は王位を継承しました。
寿也は王としての能力にも長け、治世も行き届き人々は平和に暮らしました。



勿論寿也と吾郎は夫婦仲も睦まじく
猫の小森と共に
いつまでもいつまでも幸せに暮らした・・・ということです。










めでたしめでたし。





どーしょーもないバカな話をすいません・・・。
久し振りに「長靴をはいた猫」の絵本を読んでいて、突然頭に浮かびました。
読みながら頭では妄想しつつ、読み終えた時にはこの妄想話も出来上がりました(汗)。
猫が巨人を倒す所はさっくり飛ばしてしまいましたが、まあ・・いいですよね(笑)。
まるっきりのお遊びですが、少しでも楽しんで頂けたら嬉しいですvv。

ここまで読んで下さり、ありがとうございました!!
(2006.10.12)




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