「賭けをしようよ。」
「何!?」
「明日の試合、負けたほうが海堂を諦めるっていうのはどうだい?」
「・・・おまえ・・・今どこだ!電話じゃ話にならねえ!出てきやがれ!!」
「相変わらず能天気だね、吾郎くんは。
試合前に選手同士が会ってるところなんて誰かに見られたらどうなるか。
それくらいわかると思うんだけど?」
「ゴチャゴチャうるせえ!ンな事はどーだっていいんだよ!今どこだ!!」
寿也は溜息をついた。
「○○○の電話ボックスだよ。」
「・・・○○○だな。てめー、そこから動くなよ!?」
ガチャン!!
荒々しく電話を叩き付ける音が耳に響くのを確認すると
寿也は受話器を戻した。
電話ボックスのガラスに背を預け、溜息をつく。

僕は絶対に海堂へ行く。
その事だけに全てを賭けてきた。
僕にはそれしか道は無い。背水の陣ってヤツさ。
その為には・・・。
誰であろうと邪魔はさせない。
吾郎くん、たとえ君であっても・・・・ね。

クックックック・・・。
不気味に寿也が笑う。

と、その時。
電話ボックスのドアが乱暴に開けられた。
「・・・・寿也・・・。」
「・・・。随分早かったね。」
「お前・・・。」
「何を言いに来たか知らないけど、僕から話す事は何も無い。
さっき電話で言った事が全てさ。」
「だから俺は海堂なんかに・・・!ん・・・っ!?」
一瞬の事。
寿也は吾郎の腕を引き寄せて。
次の瞬間には
叫ぶ吾郎の唇を寿也の唇が塞いでいた。
「なに、・・はな・・・せっ・・・!!」
抵抗する吾郎の後頭部に寿也の手がまわされ、がっちりと固定される。
ただでさえ狭い電話ボックスの中、吾郎は身動きが取れなくなった。
くぐもった吾郎の声と、絡み合う唾液の水音がボックス内に響き渡る。
長い沈黙の後、寿也はようやく吾郎を解放した。
真っ赤な顔で荒く息を整える吾郎に寿也は。
「・・・。何酔いしれてるの?そんなに良かった?」
「てめー・・・・。」
寿也は未だ頬のほてりが収まらない吾郎に構わず
電話ボックスの扉を開けて吾郎に背を向けた。
吾郎はその唇を手の甲で拭いながら
「訳わかんねー嫌がらせしやがって・・・・!」
「その割には随分浸ってたように見えたけど。」
寿也はチラリと振り向いて鼻で笑う。
「・・・・ぶっ殺す!!」
吾郎の暴言をその背に受けながらも全く動じない寿也。
「明日だ。明日、君は僕の前にひれ伏すんだ。ふふふ・・・。
そうなったら、また今みたいにキスしてあげるよ。頑張ったご褒美にね。」
「このド変態野郎!ひれ伏すのはお前の方だ!!」
寿也はそれには答えず、吾郎に一瞥くれるとそのまま立ち去った。
「くっそ・・・・!!」
吾郎は闘志と悔しさに、ただ拳を握り締める。

三船東 対 友ノ浦 戦は明日──────。








end

あの電話ボックスでのシーンは、何度見ても妄想を掻き立てられます。
ここまで読んで下さりありがとうございました!
(2008.11.17)




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